- 2017
- 05/27
歌手・畠山美由紀の瀬戸内紀行
「尾道、向島、鞆の浦。歌と言葉をつれて」04
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
- 今月の旅人
- 畠山美由紀(シンガーソングライター)
歌手、そしてシンガーソングライターの畠山美由紀さんが、広島県の港町、島、小さな半島を旅します。「猫の坂の港町」尾道。その向かい側に浮かぶアーティストやクリエイター、職人が多く暮らす島、向島をぐるっとめぐり、大好きな猫がたむろする小径を散策し、現存する最古の艪や櫂を手作りする老職人に出逢い、イギリスから短期滞在している音楽家たちとセッション。そして、日本最初の国立公園「瀬戸内国立公園」発祥の地とも言われる、鞆の浦へも足をのばします。
「歌」という港と、「戸崎」という港を結ぶ渡船。車ごと乗れます。向島の歌港から、福山市の戸崎港まで、およそ5分の船の旅です。
畠山美由紀さんは、歌港の近くをのんびり散策しました。訪れたのは春先でしたが、この日、陽射しは初夏のように眩しく強く、歩いていると肌が火照ってきました。小さな畑があって、辺りにはいろんな花が咲き乱れていました。
顔を上げれば、瀬戸内の海。海の碧さ、穏やかさに、驚かされます。
畠山美由紀さんの瀬戸内紀行。旅の最後は、鞆の浦です。
広島県福山市ですが、地元の人たちは笑いながらこう語ります。「ここは広島でも福山市でもない。ここは別の国、独立国、鞆の浦」。鞆の浦の人々の言葉は京都弁。「ここには京都より古い京文化が残っています」とも地元民は言います。そして、丘の上から眺める鞆の浦はこんな感じ。黒い瓦屋根が続き、その向こうに碧く光る瀬戸内海。独特の風景です。映画監督の宮崎駿さんは、この港町を気に入り、ここに暮らすように長期滞在し、そしてここで『崖の上のポニョ』の構想をねっていった、脚本を書いていったと言われています。実際、鞆の浦を旅した後で『崖の上のポニョ』を観ると、「あ、これはあそこだ!」という風景にいくつも、いくつも出逢います。
今回の旅で畠山さんは、自分の生まれ故郷、宮城県気仙沼の海辺や港の風景と、瀬戸内海を望む港や海辺の風景を、心の中で何度も重ね合わせていました。遠く離れていても繋がっている海と海。もちろん、ふたつの海の色はずいぶん異なり、静かな内海の瀬戸内海と、外洋にすぐ繋がる荒々しい気仙沼では、その雰囲気も対照的です。それでも、「海はいいですね」と言いながら、いつも潮の香りのする方へと歩いていく畠山美由紀さんでした。
「瀬戸内の海は、笑っている、輝いている」畠山美由紀。
畠山美由紀さんが鞆の浦を旅した日、渡り鳥でもあるツバメたちが、たくさん飛来してきていました。
旅人プロフィール
畠山美由紀
宮城県気仙沼生まれ。リアス三陸気仙沼大使、みやぎ絆大使。1991年に東京へ。男女ユニット「Port of Notes」、ダンスホール楽団「Double Famous」のボーカリストして活躍。2001年、シングル「輝く月が照らす夜」で、ソロ・デビューしました。オリジナルアルバムの他、カバーアルバム、ライブアルバム、ライブDVDなど多数作品を発表。
ボーカリストとして、他アーティストの作品、トリビュートアルバム、映画音楽や、TV CMソング等への参加も多い。
松任谷由実、大貫妙子、リリー・フランキー、セルジオ・メンデス、グラミー受賞プロデューサー/ジェシー・ハリス、ジャンルや世代、国境を越えて共演を果たし、同世代の女性をはじめ、音楽ファンから圧倒的な支持を受けている。
近年の活動は2011年3月、東日本大震災で被害を受けた故郷・気仙沼を想い「わが美しき故郷よ」と題した詩を、雑誌、自身のブログにて発表。その詩は、被災した人たちだけでなく、故郷を持つ全国の人々の心に届き、テレビ、新聞、雑誌、ラジオで取り上げられ話題に。
その後、NHK総合 震災ヒューマンドキュメンタリー番組のナレーションも担当し、エンディングでは自身が歌う「ふるさと」が挿入歌として流れ、問合せが殺到。
同年9月、ソロ・デビュー10周年を迎え、12月に5thアルバム「わが美しき故郷よ」を発表、全国30カ所にてツアーを開催。
2012年5月、NHK東日本大震災プロジェクト復興支援チャリティーソング『花は咲く』にも、宮城県出身として参加。同年10月1日(コーヒーの日)、ギタリスト小池龍平との企画アルバム「Coffee&Music~Drip for Smile~」を発表し、全国のカフェからFUJI ROCK FESTIVALまで、現在は「畠山美由紀 と 小池龍平のライブ」名義で全国ライブを開催中。
2013年3月、NHK BS ブレミムドラマ「神様のボート」(原作:江國香織 主演:宮沢りえ、藤木直人)のエンディングテーマ曲「ハレルヤ」を担当。番組終了後、宮沢りえをはじめ、多数の問合せや賛辞などの反響をうけ、急遽フル・バージョンをリテイク。5月22日より「ハレルヤ」をiTMSシングル独占配信(現在はコンサート会場限定CD盤として販売)。2016年7月、オーケストラ&豪華バンドとの55人編成のコンサートから「15th anniversary year」と題して、さまざまなコンサートを開催中。
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