- 2017
- 05/13
歌手・畠山美由紀の瀬戸内紀行
「尾道、向島、鞆の浦。歌と言葉をつれて」02
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
- 今月の旅人
- 畠山美由紀(シンガーソングライター)
歌手、そしてシンガーソングライターの畠山美由紀さんが、広島県の港町、島、小さな半島を旅します。「猫の坂の港町」尾道。その向かい側に浮かぶアーティストやクリエイター、職人が多く暮らす島、向島をぐるっとめぐり、大好きな猫がたむろする小径を散策し、現存する最古の艪や櫂を手作りする老職人に出逢い、イギリスから短期滞在している音楽家たちとセッション。そして、日本最初の国立公園「瀬戸内国立公園」発祥の地とも言われる、鞆の浦へも足をのばします。
尾道の町の向かい側にある、向島に、畠山美由紀さんの古い友人が暮らしています。グラフィック・デザイナーの山下リサさん。東京に暮らし、月刊誌『SWITCH』のアート・ディレクターを長年努め、本や写真のアート・ディレクション、デザインも。その頃に、『SWITCH』での畠山美由紀さんへのインタビューなどを通じて、知り合い、以来大の仲良しに。ライブ活動などで尾道を訪れる機会の多い畠山さん。今も山下リサさんとの交流は続きます。この日は、向島にある山下リサさんの家へ。築100年を越える古民家に、リサさん一家は暮らします。
「なんや、あんたら? なにしに来んや〜」と尾道弁で(?)でこっちをじろり、の黒猫が、お庭で待っていました。名前は、キキ。
この黒猫も、家族のひとり。猫が大好きで、捨て猫の保護活動なども続けている畠山さん、さっそくご挨拶です。
山下リサさんの家におじゃましたのには、理由があります。リサさんの家の部屋に置かれていた、なにやら不思議な楽器……。こちらは、スティールパン。ティンパルとも呼ばれます。カリブ海諸島やアフリカなどに伝わる民族楽器。もともと、捨てられていたドラム缶を叩いて作って生まれた楽器がルーツだとか。
畠山美由紀さんを待っていたのは、イギリス、ブリストルからやって来ている音楽家のご夫婦、シンガーソングライターのレイチェル・ダッドさんと、音楽家であり楽器製作者でもあるイチさん。寒いブリストルの冬を脱出して、5月末頃まで、向島に滞在しながら、日本でライブ活動などをおこなっているそうです。向島には、アーティストやクリエイターが何人も暮らしています。移住したそういう人たちもいれば、彼らのように短期滞在者も。
レイチェル・ダッドさん
イチさん
さっそく、イチさん&レイチェルさんのライブが始まりました。向島の古民家に、美しい歌声、楽器の音色が響きます。
畠山美由紀さんも、唄を歌いました。「浜辺の唄」。イチさんが即興でスティールパンを静かに奏でます。
なんでも手作りしてしまう山下リサさんの旦那さん、本田徹さんが、おいしいコーヒーをいれてくれました。(山下リサさんの本名は本田リサさん。お仕事のとき、旧姓を使うことが)
オーガニックの焼き菓子は、山下リサさんの手作り。コーヒーも焼き菓子も、滋味あふれ、心地よい時間を過ごしました。ごちそうさまでした。
のどかで美しい、島の時間でした。左からイチさん、子供のオトさん、レイチェルさん、畠山美由紀さん、山下リサさん(本田リサさん)、本田徹さんと、娘のマヤちゃん。
旅人プロフィール
畠山美由紀
宮城県気仙沼生まれ。リアス三陸気仙沼大使、みやぎ絆大使。1991年に東京へ。男女ユニット「Port of Notes」、ダンスホール楽団「Double Famous」のボーカリストして活躍。2001年、シングル「輝く月が照らす夜」で、ソロ・デビューしました。オリジナルアルバムの他、カバーアルバム、ライブアルバム、ライブDVDなど多数作品を発表。
ボーカリストとして、他アーティストの作品、トリビュートアルバム、映画音楽や、TV CMソング等への参加も多い。
松任谷由実、大貫妙子、リリー・フランキー、セルジオ・メンデス、グラミー受賞プロデューサー/ジェシー・ハリス、ジャンルや世代、国境を越えて共演を果たし、同世代の女性をはじめ、音楽ファンから圧倒的な支持を受けている。
近年の活動は2011年3月、東日本大震災で被害を受けた故郷・気仙沼を想い「わが美しき故郷よ」と題した詩を、雑誌、自身のブログにて発表。その詩は、被災した人たちだけでなく、故郷を持つ全国の人々の心に届き、テレビ、新聞、雑誌、ラジオで取り上げられ話題に。
その後、NHK総合 震災ヒューマンドキュメンタリー番組のナレーションも担当し、エンディングでは自身が歌う「ふるさと」が挿入歌として流れ、問合せが殺到。
同年9月、ソロ・デビュー10周年を迎え、12月に5thアルバム「わが美しき故郷よ」を発表、全国30カ所にてツアーを開催。
2012年5月、NHK東日本大震災プロジェクト復興支援チャリティーソング『花は咲く』にも、宮城県出身として参加。同年10月1日(コーヒーの日)、ギタリスト小池龍平との企画アルバム「Coffee&Music~Drip for Smile~」を発表し、全国のカフェからFUJI ROCK FESTIVALまで、現在は「畠山美由紀 と 小池龍平のライブ」名義で全国ライブを開催中。
2013年3月、NHK BS ブレミムドラマ「神様のボート」(原作:江國香織 主演:宮沢りえ、藤木直人)のエンディングテーマ曲「ハレルヤ」を担当。番組終了後、宮沢りえをはじめ、多数の問合せや賛辞などの反響をうけ、急遽フル・バージョンをリテイク。5月22日より「ハレルヤ」をiTMSシングル独占配信(現在はコンサート会場限定CD盤として販売)。2016年7月、オーケストラ&豪華バンドとの55人編成のコンサートから「15th anniversary year」と題して、さまざまなコンサートを開催中。
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