- 2017
- 05/06
歌手・畠山美由紀の瀬戸内紀行
「尾道、向島、鞆の浦。歌と言葉をつれて」01
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
- 今月の旅人
- 畠山美由紀(シンガーソングライター)
歌手、そしてシンガーソングライターの畠山美由紀さんが、広島県の港町、島、小さな半島を旅します。「猫の坂の港町」尾道。その向かい側に浮かぶアーティストやクリエイター、職人が多く暮らす島、向島をぐるっとめぐり、大好きな猫がたむろする小径を散策し、現存する最古の艪や櫂を手作りする老職人に出逢い、イギリスから短期滞在している音楽家たちとセッション。そして、日本最初の国立公園「瀬戸内国立公園」発祥の地とも言われる、鞆の浦へも足をのばします。
尾道の市街地から南へわずか300メートルほど離れたところに、向島があります。ふたつの場所、尾道と向島のあいだには、尾道水道と呼ばれる、川のような小さな海峡があり、渡船が行ったり来たりしています。橋が架かった尾道と向島ですが、今でも多くの住民が渡船を利用しています。仕事に行くために、学校へ通うために、買い物のために……などなど。渡船乗り場はいくつかあり、渡船の大きさも複数あります。人間だけが(犬も大丈夫)乗れる小さなタイプの渡船もあれば、車ごと乗れる渡船もあります。ちなみに、渡船に乗っている時間はわずか2〜3分です。夕方、向島の渡船乗り場のすぐそばで、水面が青い尾道水道をバックに。
尾道に暮らす人、向島に暮らす人たちには、日常の風景だと思いますが、旅人にとって、夕暮れどきの渡船乗り場や港の風景は、あまりにも美しく、かけがえのない時間です。尾道水道がゴールデンに輝くマジック・アワー。
瀬戸内国立公園、向島の最高峰、標高284メートルの高見山、山頂展望台からの眺め。碧く眩しい瀬戸内の海と、ぽこぽこと浮かぶ島々、そして行き交う船。畠山美由紀さんは、「海が笑っている。波が輝いている」と語りました。
木を切って、削り、櫓や櫂(つまり、オールやパドル)を手作りしている職人、瀬尾豊明さんの工房です。今、日本全国で、このように櫓や櫂を手作りしている職人は、「自分以外にいないそうだよ」と瀬尾さん。『男はつらいよ』の寅さんも何度も渡った「矢切の渡し」の、あの木船のオール(櫓)も、瀬尾さんが作ったもの。
独特の道具で、こうやって削っていきます。慣れていないと、「足をぐさっとやってしまう」そうです!
作業を見学させてくださって、そして、お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
今回の尾道、向島、鞆の浦の旅をガイドしてくださった、山下リサさん。畠山美由紀さんの古い友人。グラフィック・デザイナーとして東京で長く仕事をしていました。雑誌『SWITCH』アート・ディレクターを務め、何冊も単行本や写真集のアート・ディレクションも。現在は家族とともに向島に暮らしていますが、今も「遠隔操作」?で、東京のアート・ディレクション、グラフィック・デザインの仕事も続けています。
旅人プロフィール
畠山美由紀
宮城県気仙沼生まれ。リアス三陸気仙沼大使、みやぎ絆大使。1991年に東京へ。男女ユニット「Port of Notes」、ダンスホール楽団「Double Famous」のボーカリストして活躍。2001年、シングル「輝く月が照らす夜」で、ソロ・デビューしました。オリジナルアルバムの他、カバーアルバム、ライブアルバム、ライブDVDなど多数作品を発表。
ボーカリストとして、他アーティストの作品、トリビュートアルバム、映画音楽や、TV CMソング等への参加も多い。
松任谷由実、大貫妙子、リリー・フランキー、セルジオ・メンデス、グラミー受賞プロデューサー/ジェシー・ハリス、ジャンルや世代、国境を越えて共演を果たし、同世代の女性をはじめ、音楽ファンから圧倒的な支持を受けている。
近年の活動は2011年3月、東日本大震災で被害を受けた故郷・気仙沼を想い「わが美しき故郷よ」と題した詩を、雑誌、自身のブログにて発表。その詩は、被災した人たちだけでなく、故郷を持つ全国の人々の心に届き、テレビ、新聞、雑誌、ラジオで取り上げられ話題に。
その後、NHK総合 震災ヒューマンドキュメンタリー番組のナレーションも担当し、エンディングでは自身が歌う「ふるさと」が挿入歌として流れ、問合せが殺到。
同年9月、ソロ・デビュー10周年を迎え、12月に5thアルバム「わが美しき故郷よ」を発表、全国30カ所にてツアーを開催。
2012年5月、NHK東日本大震災プロジェクト復興支援チャリティーソング『花は咲く』にも、宮城県出身として参加。同年10月1日(コーヒーの日)、ギタリスト小池龍平との企画アルバム「Coffee&Music~Drip for Smile~」を発表し、全国のカフェからFUJI ROCK FESTIVALまで、現在は「畠山美由紀 と 小池龍平のライブ」名義で全国ライブを開催中。
2013年3月、NHK BS ブレミムドラマ「神様のボート」(原作:江國香織 主演:宮沢りえ、藤木直人)のエンディングテーマ曲「ハレルヤ」を担当。番組終了後、宮沢りえをはじめ、多数の問合せや賛辞などの反響をうけ、急遽フル・バージョンをリテイク。5月22日より「ハレルヤ」をiTMSシングル独占配信(現在はコンサート会場限定CD盤として販売)。2016年7月、オーケストラ&豪華バンドとの55人編成のコンサートから「15th anniversary year」と題して、さまざまなコンサートを開催中。
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