yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

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ストーリー

第496話 自分を冷たく突き放す
-【軽井沢にゆかりのある作家篇】池波正太郎-

Podcast 

軽井沢、「万平ホテル」を愛した、時代小説家のレジェンドがいます。 池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)。 戦後の日本を代表する、時代小説、歴史小説の書き手であるだけでなく、味わい深く示唆に富んだエッセイでも有名です。 三大シリーズと呼ばれる、『剣客商売』『鬼平犯科帳』、そして『仕掛人・藤枝梅安』は、今も多くのファンに読み継がれ、何度も映像化されています。 池波が初めて軽井沢を訪れたのは、彼がまだ10代の頃でした。 小学校を出ると、家計を助けるため、すぐに仕事につき、13歳のときには、株式仲買店で働きながら、小説を書いていた池波。 友人と二人で行った夏の軽井沢は、ある意味、後の作家人生の伏線になるような、思い出深い旅になりました。 南アルプスで遊び、八ヶ岳山麓をめぐり、星野温泉に宿泊。 当時の軽井沢は、街並みに、江戸の宿場町の風情を残していました。 晩夏の街道に人影はなく、いかにも長脇差を腰に、さんど笠を被った「沓掛時次郎(くつかけ・ときじろう)」が歩いてくるようだったと、エッセイ『よい匂いのする一夜』に書いています。 『沓掛時次郎』とは、「股旅物」を世に広めた大家、長谷川伸(はせがわ・しん)の大人気戯曲。 そのときの池波は、のちに、自分が長谷川伸に弟子入りするとは、思いもしなかったことでしょう。 さらに、沓掛とは、江戸から数えて19番目の宿場で、そこは、現在の中軽井沢に位置します。 軽井沢は、池波の作家人生を支える、大切な場所になりました。 別荘を持たなかった池波ですが、特に軽井沢の「万平ホテル」は、彼にとって大きな存在でした。 10代で初めて「万平ホテル」に泊まったとき、年齢を偽って21歳としても、ホテルのひとは問いただすことはありません。 一人前の大人として扱ってもらったこと。 そのときの喜びと身が引き締まるような思いを、生涯、忘れませんでした。 池波は、師匠、長谷川伸に、いくつかの言葉をもらいますが、特に忘れられないものに、この言葉をあげています。 「絶えず自分を冷たく突き放して見つめることを忘れるな」 人情やユーモアを大切にして、常に弱い者の視点を貫いた池波の、根幹。 そこには、冷静に、己の生き様を見つめる眼がありました。 67年の生涯を「書くこと」に捧げた文豪・池波正太郎が人生でつかんだ、明日へのyes!とは? 作家・池波正太郎は、1923年1月25日、東京、浅草に生まれた。 父は日本橋の錦糸問屋に勤めていた。 池波が生まれた年に、関東大震災が起きた。 一家は埼玉の浦和に引っ越す。 やがて東京に舞い戻るも、父の商売がうまくいかない。 父は生来のおひとよしで、おまけに大酒飲み。 反対に母は勝気で働き者。 二人の間に溝ができ、離婚。 母に引き取られる。 江戸っ子で職人かたぎの祖父は、正太郎をたいそう可愛がった。 祖父に連れられて、よく芝居見物に通った。 チャンバラ映画と、少年向けの冒険小説を好んだ。 小学校を卒業するとき、担任は進学をすすめた。 成績は優秀。 絵を画くのもうまく、池波は将来、日本画の巨匠、鏑木清方(かぶらき・きよかた)の弟子になることを夢みていた。 でも、池波は家計を助けるため、株式現物取引の店に奉公に出た。 必死で、働く。 ちょっとした工夫で効率がよくなることを学ぶ。 空いた時間は、小説を読んだ。 のちにペンキ屋に就職するが、再び、株式仲買の店で働くようになる。 当時の株の世界は、投機性、博打の匂いが強かった。 そこで、まだ10歳になるかならないかの池波少年は、天国と地獄を見る。 池波正太郎が、幼い日、働いていた株式仲買店で見た、投資の現実。 店先で、泣き崩れる男。 財産を無くし、ものすごい剣幕で店にやってくる客。 一方で、儲かったひとは、気前よく、自分にチップをくれた。 お金に翻弄され、心を奪われていく大人たち。 中には身を持ち崩し、自ら命を断つものまであった。 子ども心に思う。 「そうか…お金ってやつは、恐ろしいんだな」 学校に行っても学べない、この世のリアル。 生と死。 それを最も体験したのは、戦争だった。 18歳の時、太平洋戦争開戦。 勤労動員として、芝浦の製作所に配属。旋盤工の技術を学ぶ。 岐阜の工場では、旋盤を教えるまで上達していた。 毎日の重労働。 そんな中でも小説を書き続ける。 雑誌に投稿。賞をとる。 時代小説を書くと、気持ちが楽になった。 戦局は、悪化の一途をたどる。 ただ、敗戦濃厚にもかかわらず、大相撲や芝居はいつもどおり開催されていた。 絶えず死を隣に感じながら、上官の叱責に耐え、小説を書いた。 理不尽に殴られ、なじられ、地面に頭をすりつけられても、池波は思っていた。 「ボクの心までは、誰も足を踏み入れることができない。 心だけは、ボクの意のままにある」 池波正太郎、横須賀海兵団、入団。 敗戦、死、崩壊。 そんな中にあって、唯一の収穫もあった。 それは、「こいつとだったら死ねる」という同士に出会えたこと。 究極の精神状態でも、我が信念を貫く、信頼できる仲間がいた。 人間の強さを信じられる気持ちになった。 ただ、終戦を迎え、新聞やラジオの手のひら返しには辟易した。 悲惨な戦争の片棒をかついだあと、急にかつての体制を叩く豹変ぶり。 マスコミとは、何か。 大衆をあおり、扇動する責任はないのか。 池波は、ますます創作に心をくだいた。 時代に翻弄されない、冷静な心で、物語を書きたい。 彼が選んだジャンルは、時代小説だった。 時代は違っても、そこには、真実があった。 どんなときにも必死に前を向く、庶民の強さがあった。 「人間は、生まれた瞬間から、死へ向かって歩みはじめる」 池波正太郎 【ON AIR LIST】 ◆クーリー / ディジー・ガレスピー ◆ビー・クール / ジョニ・ミッチェル ◆鬼平犯科帳 オープニング・テーマ / 津島利章(作曲) ◆シング・シング・シング / ベニー・グッドマン ★今回の撮影は、「万平ホテル」様にご協力いただきました。ありがとうございました。 アクセスなど、詳しくは公式HPにてご確認ください。 万平ホテル 公式HP
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RECIPE

レシピ

霜降りひらたけの酸辣湯

今回は、3月が旬の食材、ニラを使った料理をご紹介します。

材料 (2人分)
  • 霜降りひらたけ 1パック
  • トマト 1個
  • ニラ 1/3束
  • ハム 4枚
  • 卵 1個
  • ごま油 大さじ2
  • 【A】水 400ml
  • 【A】しょう油 小さじ1
  • 【A】塩 小さじ1/3
  • 【B】酢 大さじ2
  • 【B】片栗粉 大さじ1
写真 カロリー / 255kcal(1人分)
調理時間 / 15分
使用したきのこ / 霜降りひらたけ
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。トマトはくし形切りに、ハムは1cm幅の細切りに、ニラは5cm幅に切る。
  • 2.
  • 鍋にごま油を熱し、霜降りひらたけ、トマト、ハムを入れてさっと炒め、【A】を加える。
  • 3.
  • 沸騰したら、溶いた卵を細く流しいれる。
  • 4.
  • 混ぜ合わせた【B】を加えてとろみをつけ、ニラを加えて火を止める。器に盛り、お好みでラー油をかける。

yesとは?

番組概要

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』今週あなたは、自分を褒めてあげましたか? 古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。あなたの「yes!」のために。

語り:長塚圭史 脚本:北阪 昌人 ▸ Profile

放送時間
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
  • TOKYO FM…SAT 18:00-18:30
  • FM大阪…SAT 18:30-19:00
  • FM長野…SAT 18:30-19:00
  • FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
長塚 圭史

PROFILE

長塚 圭史
語り: 長塚 圭史
1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。 また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。
北阪 昌人
脚本: 北阪 昌人
1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。 TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。 『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。 主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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