石丸:柄本明さん、お久しぶりです。
柄本:どうも、お久しぶりです。
石丸:ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)以来ですよね。
柄本:ええ、お世話になりました。
石丸:こちらこそです。これから5週にわたりお話を聞かせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは、人生で大切にしている“こと”や“ひと”についてお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせくださいますでしょうか。
柄本:今日は、「家族」についてです。
石丸:柄本さんのご家族は、皆さん俳優をやっていらっしゃいますよね。
柄本:何かそんなことになっちゃいましたよね。
石丸:(笑)。息子さんはお2人、佑(たすく)さんと時生(ときお)さんは俳優をやっていらっしゃって、お亡くなりになりましたけど、奥様も女優をやっていらっしゃいました。
柄本:ええ。
石丸:そして、佑さんの奥さんが安藤サクラさん。また俳優の奥様が加わり。
柄本:本当にね(笑)。
石丸:家の中で、“俳優談義”みたいな、仕事についてのお話とかってあったりするんですか?
柄本:まあ、するっていう感じでしているわけでもないですからね。だから…まあ、しょうがないですよね(笑)。
石丸:そうですね、しょうがないですよね(笑)。
柄本:みんなそういう仕事だから、(話に)上らないことは無いけれども、だからといってね。
石丸:お互いに、芝居や映画などの作品とかを観に行ったりとかなさるんですか。
柄本:いやあ、全て観るなんてことは全然無いですね。ちょっと観たりもする時もあると。
石丸:息子さんは、お父様に観られるとプレッシャーになったりされるかもしれませんよね。
柄本:まあ、それと、もちろん“観てもらいたい”っていうのもあるじゃないですか。それはどこかで、お互いにね。“観てもらいたくない”というのと同時に、“観てもらいたい”みたいなこともあるでしょうし。でも、そんなに観ていないですね。
石丸:観ていないですか。
柄本:僕はね、自分のやつも観ないんですよ。
石丸:やっぱり撮り終わったものは「もう過ぎたもの」という感覚でいらっしゃいますか。
柄本:何か、観ないですね。映画を観るのは好きなんですけどもね。
石丸:ご自分が出ていない映画、ということですね。
柄本:そうですね。自分のことが気になるのが嫌なのかもしれませんね。
石丸:なるほど。安藤さんが(家族に)加わったということで、安藤さんは奥田(瑛二)さんのお嬢さまじゃないですか。
柄本:そうですね。母親は安藤加津さんだし、(姉は)安藤桃子だし。
石丸:ですよね。そういうところで家族交流というのは頻繁にある方なんですか。
柄本:いや、そんなに頻繁にはないですけど、大晦日、正月に集まったりしたことはありますけどね。
今、彼ら(柄本佑、安藤サクラ夫妻)が、京都の方にも住んでいて。だから、京都と東京を行ったり来たりしているんですよ。そんなこともあって、京都へ行くと連絡して会って飯を食ったりしてますけどね。この前は、佑の方は東京で仕事をしていて、サクラと孫が京都に居ましたので、一緒に京都で飯を食いましたけどね。
下の子の時生も近くですけど家から出ていますし、あと、長女が俳優ではないですけども、今 札幌の方で仕事をしているのかな。
石丸:そうですか。じゃあ…。
柄本:みんなバラバラですね。
石丸:今やなかなか会えないご家族ですが、会うとどうですか。
柄本:やっぱり良いですよ。元気でいてくれれば…とにかく元気が一番ですよね。
石丸:さて、話は変わりますが、昨日(9月1日)から、柄本さんご出演の映画『福田村事件』が公開されております。これは、関東大震災の混乱の最中に、薬売りの行商9名がある村で休憩していたところ襲撃されて殺されてしまったというお話なんですが、実際に起きた「福田村事件」を映画化されているということですね。柄本さんの役は?
柄本:僕は、その村の村人というか、そんなにたくさん出ていないんですけど、宴会のシーンで騒動が起きるから、そのシーンを一生懸命やりました。
石丸:これは実際にあった事件ということで、かなり描写もリアルな感じ?
柄本:今、こういった時代で、何と言うんですかね…ロシア、ウクライナの問題もあるし、タイムリーと言っちゃ何ですけど、重いテーマの作品なんじゃないですかね。
石丸:そういう、非常時になった時の人間の心理みたいなものが。
柄本:関東大震災が起きて、それぞれの人たちの心情が揺れ動いていくさまを描いた、ね。
石丸:100年前の話ですけれども、現在にも非常に通じるということですね。主演は井浦新さんと田中麗奈さん。そして、永山瑛太さん、東出昌大さん、コムアイさんなどトップを走っている若手の俳優さんたちが名を連ねていらっしゃいますけど、現場はどんな雰囲気で進められていたんですか。
柄本:僕は現場では喋らないんですよ。
石丸:コミュニケーションはあまり取らないでいらっしゃる。
柄本:そうですね。もちろん何か聞かれたら、「はい」とか返事はするけど(笑)。何かね、喋らないんですよね。
石丸:現場ではいろんな方がいらっしゃいますけども、一生懸命お喋りして場を和まそうとする俳優さんもいらしたりね。
柄本さんはどちらかというと孤高な。
柄本:孤高ね…孤高かな、どうかな(笑)。何かね、喋らないんですよね。
石丸:それはどの現場に行っても大体そうですか?
柄本:そうですね。あんまり喋らないですね。
石丸:若い俳優たちが寄ってきて、質問してきたりとかしませんか。
柄本:うーん…ずっと黙っているから近寄ってこないというか(笑)。
石丸:(笑)。改めて申し上げますけども、関東大震災が起きた1923年から100年となる今年2023年の9月1日に公開をされているという映画です。100年前のお話ですが、今にも通じることをテーマに扱っているということで。
今、どちらかというと日本は平和じゃないですか。でも、“周りに何かが起きた時に、こういうことが起こるかもよ”ということを信号として出している映画ですね。
柄本:そうですね、そうだと思います。やっぱり人間というのは弱いですからね。今、日本という国は平和だけども、何か起こるとこう、ヒタヒタとしたものが日本にあるんですかね、ないんですかね(笑)。
石丸:人ごとじゃなくなってきてはいますよね。
柄本:そうですね。
石丸:映画『福田村事件』は、昨日よりテアトル新宿、ユーロスペースほか全国で公開になっております。是非皆さんもこの映画をご覧になって、「じゃあ、自分はどうするか」ということも考えられる映画かもしれません。
柄本:我々は常に被害者ということを思っちゃうんだけど、加害者でもありますからね。
石丸:そこですよね。知らないうちにね。さあ、皆さんはこの映画を観てどんなことをお思いになるでしょうか。是非考えてみてください。
柄本:よろしくお願いします。