石丸:花總まりさん、今週もどうぞよろしくお願いします。
花總:よろしくお願いします。
石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか。
花總:今日は、「舞台女優として大切にしている言葉」についてです。
石丸:それは何ですか?
花總:「舞台には誠実であれ」。
石丸:おお!
花總:(笑)響きますね。
石丸:そうだね、響くね。この言葉はいつ聞いたんですか?
花總:これは、宝塚音楽学校時代に、演劇の授業で先生がおっしゃっていた言葉なんです。細かいことは覚えていないのですが、この言葉だけすごく覚えていて、ずっと頭に残っていますね。
石丸:それこそ、この言葉は、12年間トップとして居られた、自分のベースとなる言葉でしたか?
花總:宝塚の時って、みんなで演っている“集団パワー”というのかな。若さや勢いというエネルギーの中で演っていけた。でも、宝塚を辞めると1人じゃないですか。だから、宝塚を辞めてから現在に至るほど、この言葉を心の中で唱えるようになった気がします。
石丸:辞めたからこそ、改めて気づいた大事な言葉になるのかな。
花總:そんな感じがしていますね。
石丸:この言葉を(心の中で)唱えた時は、どんな想いで舞台に立っていますか。
花總:やはりお芝居が多いので、“演っていることに嘘をつきたくない”というのがあるし、あと、日々、いろんな調子があるじゃないですか。身体の波だったり、気分の波だったり。この言葉は、そんなちょっとグラついている自分を、どんな状態でもフッと軌道修正してくれる。
石丸:そうか。(公演を)スタートする時に、いつもニュートラルで居られるようにする言葉なんですね。でも、そういうものがあるかないかで全然違いますからね。
花總:そうですね。この言葉にはたくさん救われたというか、支えてもらってきましたね。“今日は大丈夫かな”とか、ちょっと神経が散漫になっている時とか…。
石丸:その言葉をフッと思い出して、スッと元に戻る。
花總:“ちゃんと向き合わないと”と。
石丸:一発でそこに戻れる、大事な言葉ですね。
花總:それはすごく思います。
石丸:頂戴いたします(笑)。
花總:(笑)。石丸さんは、そういう言葉は何かないですか?
石丸: 僕は、座右の銘にもなっているけど、「一期一会」。お客様の前ではダレたようなことはしない。きっちり、新鮮な気持ちで始めて、バッっと見てもらえるような思いで舞台に立とう、と。だから、(花總さんと)同じようなことですよね。
花總:いろんな日がありますよね。
石丸:あります。“その時のベストを出せば良いんだ。ある意味、完璧じゃなくても良い。ベストが出る、ベストが出せるようなところに行けば良いんだ”という。僕はちょっと甘やかしてますけど。
花總:いえいえ。それは甘えではないですよ。誰でも思うことですし。
石丸:そうですか、ありがとう。慰めて貰っちゃいました(笑)。
花總:でも、そういうことをたくさん思い浮かべるじゃないですか。“自分の中で自分と戦う”じゃないですけど…。
石丸:そうね。毎日戦っているものね。
花總:そう、毎日戦っている(笑)。
石丸:演劇もミュージカルもそうだけど、開幕したら終演まで、自分で走らなきゃいけないから。
花總:そうですよね。
石丸:走り切るためのスタミナとかそういうことを全部考えて、ゴールにたどり着いたら、ホッとするじゃない。カーテンコールの笑顔は、多分みんな、ホッとした笑顔なんじゃないかな(笑)。
花總:ホッとしますよね。途中でくじけそうな時とかもありますよね。
石丸:これは、同じ時間を走ってきた者同士が分かる想いです。みなさん、人生でもそういうことがあって、1日がスタートしたら、終わりにホッとしたいじゃないですか。
花總:そうですよね。
石丸:いろんなことがあっても、途中でリセットもできるし、“最後までたどり着ければ良し”と。
花總:そう!