石丸:古川雄大さん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせくださいますか。
古川:今日は「睡眠」について。
石丸:「睡眠」。ちゃんと深く眠れる人?
古川:それが、あんまりなんです。寝るのは好きなんですけど、あまり寝つきが良くなくて。寝れる時はストンっと寝れるんですけど、環境に左右されたりとか…例えばクランクイン前日とか、(舞台)初日前とかだと、寝れなかったり。
石丸:それは皆そうだよ(笑)。
古川:そうですか(笑)。石丸さんも、“初日前に寝られない”とか、ありますか?
石丸:寝れないよ。
古川:ええ、本当ですか!
石丸:無理やりにでもどうやって寝ようかっていうのは、いつも課題。バーッと走ってきて疲れたままバッと寝るとか、風呂に入って身体を温めてそのまま勢いで寝るとか、いろんなことをやってるけど、正解は無いです。
古川:そうなんですね。
石丸:雄大は、今のところ、どんなふうにすると“しっかり深く眠れる”というところに行きついている?
古川:今のところは、やっぱり「毎日規則正しい生活を送る」ということが1番だな、というところに行きついていて。でも、この仕事をやっていると、ちょっと難しいじゃないですか。
石丸:そうだね。
古川:不規則になりがちなので。そうすると、マウスピースをしたりとか、鼻テープとか。あと、マネージャーさんにいただいたんですけど、プラネタリウム。(星を)天井に映してくれるというのがあって。
石丸:星を見ながら眠る。
古川:メンタル的な部分と身体的な部分でやると良いんじゃないかなと思ってやってるんですけど、根本的なことを言うと、ウチは壁が薄いんです。
石丸:壁が薄い!
古川:ちゃんと鉄筋コンクリートなのに、隣の(部屋の)人の声とか聞こえるんです。
石丸:それは気になっちゃう。
古川:気になるんです。寝ていて左側が隣の部屋の人で、たまにお酒を飲みながら騒いでいらっしゃる。そして右側がいわゆる大通り(笑)。だから、右も左も騒音なんです。
石丸:早く引っ越せ(笑)。
古川:そこですよね(笑)。それが無くなったら、もしかしたらめちゃくちゃ寝れるのかもしれないと思って。
石丸:だったら、耳栓がいいんじゃない?
古川:それが、耳栓もやってみたんですけど、耳に何か入ってるっていうのが…。
石丸:気になるか。分かるなあ。
古川:石丸さんは、何かされていることはありますか? それを聞きたくて。
石丸:僕はね、さっきのプラネタリウムに近いものなんだけど、眠りの音楽を。昔はCDを買ってたんだけど、今はiTunesとかに寝るための音楽が入っていて、それを耳元で薄く流すと、僕の場合はものの5分ですっと寝ちゃうんです。
それは、舞台をやってる時でも。マチネ(昼公演)とソワレ(夜公演)の間に1時間半ぐらいあるでしょ。あの時間に15分だけいつも寝てるんだけど、それをかけると5分でスッと寝れるから、意外と(身体が)休まるし、これはお勧めです。
古川:それって、毎回違うものを聴いているんですか? それとも必ず聴くものがあるとか?
石丸:なんとなく同じものを聴いているんだけど、ゆらぎのような、α波が出ているような感じのものを聴いてる。水がチョロチョロ流れているとか。
古川:ありますよね。
石丸:それを、タイマーで切れるようにすると良いかも。お勧めです。
古川:ちょっとやってみます。ありがとうございます。
石丸:話は変わりますが、古川雄大さんは来月から始まるミュージカル『エリザベート』の出演が決定しています! この話は、19世紀末のウィーンを舞台に、ハプスブルク帝国最後の皇后エリザベートと死を擬人化した黄泉の帝王トートとの禁じられた愛を描いた作品です。
雄大にとって、『エリザベート』は特別なミュージカルだよね?
古川:特別ですね。初めて東宝ミュージカルに参加させていただいたのが『エリザベート』で、そこで石丸さんとお会いして。
石丸:でしたね。その時は(雄大が)ルドルフで、僕がトート。
古川:その時に“いつかトートをやりたい”って思うようになったんです。石丸さん、マテ(・カマラス)さん、山口祐一郎さん、御三方のトートを観て憧れてしまって。
石丸:そうでしたか。
古川:僕のミュージカルをやる上での目標になりました。すごく覚えているのが、石丸さんが毎回、メイクやネイルとかを変えていらっしゃったんです。毎回変化をつけて演じられていて。
石丸:本当?
古川:(石丸さんが)「今日はこんな感じでいってみるわ」みたいなことを楽屋に来て伝えてくださったことがあって。
石丸:確かにそうだったね。トートをやる時に、僕は他の2人よりも体が小さいので、大きく見せるために、演出家の小池修一郎さんから「いろいろ工夫しなさい」と言われて、長めの付け爪をしたり、つけ爪の色のままずっと指の根元までその色を引っ張っていって、節くれだった手に見えるように。そういう工夫はしてたね。
古川:なるほど。
石丸:で、毎回やって面白がって見せに行ってた気がする(笑)。「今日はこれで行くよ」って。
古川:そうやって毎回徹底して役と向き合ってる姿を間近で拝見して、勉強させていただいてました。
石丸:そうだったんだね。何か懐かしいけど、あの時の24歳の雄大はキレッキレのダンスで、フレッシュさがすごかった。
古川:ダンスは頑張りました(笑)。
石丸:毎日、舞台に立つ時ってどんな思いだった?
古川:あの当時は、もう消えそうな感じでした。何か必死過ぎて。歌も難しいですし。
石丸:(キーが)高い歌だったね。低いのもあったけど。
古川:低いのもあったんですけども、基本、ルドルフって(キーが)上じゃないですか。大きい作品で、しかもルドルフという良い役をいただけたプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、約半年ぐらい毎回舞台に立つ時に、本当にド緊張していましたし…。
石丸:そうなんだ。追い詰められた状況で出てくるキャラクターだったから、役にはそれが合っていたのかもね。
古川:そうですね。ルドルフにはぴったりな状況だったと思います。
石丸:そんな雄大が、ルドルフを3期くらい務めた後かな、前回(2019年公演)トートになって。
古川:そうですね。
石丸:念願叶ってトートになって、稽古に入ってみてどうだった?
古川:今まで5人のいろんなトートを観てきて、“いろんなタイプがいるな、すごいな” と思いながら、“自分ではこうやろうかな”みたいなことを生意気ながら考えていたんですけれど。
石丸:どんなふうに考えた?
古川:トートを演じるにあたって“自分の個性をいっぱい入れたいな”って考えていたんですけど、でもそれは想像でしかなくて。実際に演じるとなった時に、“トートって訳が分からないな”ってなったんです。
石丸:確かに。
古川:話の流れ的にもすごく難しいし、存在するのもすごく難しいし、理由づけなんてどうにでもなるし。
石丸:「死」だからね。人じゃないからね。
古川:そうなんです。それを考えれば考えるほど訳が分からなくなってきちゃって。目標にしてたどり着いたけど、すごく奥深いもので、実は全然たどり着けてなかった…みたいな感じなんです。だから前回は全然つかめなくて。
石丸:そうなんだ。
古川:だから“すごいものを目標にしてしまったな”という思いと、それを素晴らしく演じていらっしゃった今までのトートの方を改めて尊敬しました。
石丸:“こういうイメージのものを目指していた”とかあった?
古川:僕は「死の概念」を演じようとしていたんですけど、先生(演出の小池修一郎氏)からは擬人化したものを求められました。「ちゃんと擬人化されているので、もっと感情をちゃんと伝えなさい」とダメ出しをたくさんいただいて。それで人間らしいトートになったのが前回で、だから、「黄泉の帝王」っていうよりは、「なりたてのプリンス」みたいな感覚でした。
石丸:そうか(笑)。
古川:威厳があんまり無い感じの、人間らしい感情豊かなトートになったかな、という感じでした。ただ、(前回、初めてトート役を演じた)当時の、30ちょいの年齢で出来るトートだったかなと思います。だから、今回はどんな感じになるのか楽しみです。
石丸:そうだね。ミュージカル『エリザベート』は、東京、愛知、大阪、福岡の4都市での公演が決定しています。詳しくはミュージカル『エリザベート』のホームページをご確認ください。
観に行きたいな。
古川:ありがとうございます。是非お願いします。
石丸:是非是非。