石丸:藤岡弘、さん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。
藤岡:よろしくお願いします。
石丸:このサロンでは4週にわたって人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしてまいりました。最終週は“時を重ねながら長く大切にしていること”についてお聞きしたいと思います。藤岡さん、それは何でしょうか。
藤岡:「藤岡家の家訓」についてお話しできればと思っております。
石丸:家訓ですね。
藤岡:「家訓」というとちょっと大上段なんですが、まあ“言い伝え”ですね。父母が「必ずこうしなさいよ」と言って残してくれたことを私も家族に伝えていこう、ということです。
石丸:藤岡さんは家族愛が深く、そして最近はYouTubeなど、ご家族揃っていろんなことをやっていらっしゃるのを拝見していますが、そういう中で家訓を伝えたり、藤岡さんの想いがお子さん達に伝わっているのかなと思うんですけれども。
藤岡家では家族会議を開いていらっしゃるそうですが、やっぱり囲炉裏端でされるんですか?
藤岡:そういう時もありますけど、最近は(みんな)忙しくて時間がバラバラなので、決めてもなかなか(集まるのが)難しいです。タイミングをはかって、個々の時もあるし、全員の時もありますが、とにかくその時の子供たちの持っている想いや考えを聞いて、迷いや悩みを話し合いながら一緒に解決していくというか。
石丸:素敵ですね。
藤岡:子供たちにとって、自分の中で越えられない問題や問題意識に突き当たるわけですよね。そこで僕に「お父さん、こういう場合はどうしたら良いの?」というように(聞いてくる)。それが嬉しいですよね。
「それはこうだよ、ああだよ」と答えると、子供たちが「ああ、そうなんだ!」と、発見があった表情になる。それを見ると、“また一歩成長したな”っていう。
石丸:子供たち同士でも 上の子から下の子に対していろんなアドバイスをされてたりもするんですか?
藤岡:子供たち同士でもやっていると思いますね。女の子3人はよく一緒に話しているんです。でも男の子は長男1人で、やっぱり寂しいだろうからと、僕は長男とトレーニング場にいつも一緒に行って、風呂に入った時に男同士の裸の付き合いで話をするんですよ。
石丸:良いですね。
藤岡:これがまた良いんですよ。サウナに入ったり湯船に浸かると、体も解放されているし、気持ちも良いし、そこで男同士の会話が出来るという。そういうのを今、すごく楽しめていますね。
石丸:その(長男の)真威人くん、昨年公開された仮面ライダー50周年記念映画(『仮面ライダービヨンド・ジェネレーションズ』)で、仮面ライダー1号の本郷猛役を演じましたね。
藤岡:これはびっくりですね。僕の長男の真威人に話が来るというのは想像もしてなかったんだけど、(テレビの)画面に出始めてから皆さんが言ってくれたので、なんとなく予感があったことはあったんですよ。
石丸:ありましたか! 息子さんはそれ(仮面ライダー1号 本郷猛役)が決まった時に、藤岡さんに何とおっしゃっていましたか?
藤岡:すごく喜んでいましたね。「お父さん(と同じ役)を演じられるの!」っていうね。
石丸:真っ先に変身のポーズとか伝授なさいましたか?
藤岡:そうですね。ものすごいやる気になって、私に変身ポーズや気持ちや心の持ち方を質問してきましたね。
石丸:すごい! 自分の家に“本郷猛”がいるわけですからね。
藤岡:まさか50年前に演じた役を自分の息子が演じるなんて奇跡のような出来事なので、良い思い出を作っていただいたみなさんに本当に感謝しますね。真威人にとっても大きな思い出を残していただきました。
石丸:お父さん(の立場)としてはどんな想いでしたか?
藤岡:初めての映画出演なので、“どういう風にやるのかな、大丈夫かな”とちょっと心配だったんです。でも、教えているうちに“もしかしたら、俺よりもいけるんじゃないかな”と思って(笑)。その当時の自分を思い出すと“(息子は)しっかりしているな”と思ったり、いろんな面を感じましたね。
石丸:素敵な時間でしたね。
藤岡:親子として大変良い時間をいただきました。
石丸:真威人くんはこういう形で映画に出演されましたけど、他のご家族の皆さんともぜひ共演を。
藤岡:一番下の三女、藤岡舞衣と次女の天翔天音がいるんですけど、一番下(藤岡舞衣)は中学生でまだ幼いのでね。一人立ち出来るようになるまで、育て上げたいと思っています。
子供たちとのしっかりとした思い出が映画か何かで出来たら良いなという想いはありますのでね。
石丸:私たちもぜひスクリーンで観てみたいと思っています。
藤岡:僕にとっては(産まれたのが)遅い子だったので、余計に心配になるというか…。可愛くて仕方がないという面もあるんですけどね(笑)。
この子たちを見るたびにいつも“俺もまだ頑張らなきゃ”って、逆に自分を奮い立たせるようなエネルギーをもらっていますから、かえって感謝ですよね。
石丸:お子さん達には「こういう風に生きて行け」ということは常々伝えていらっしゃるんですか?
藤岡:極端なことはまだ言ってませんけど、壁に当たっている時などは、その都度言ってますね。刷り込みのようにとにかく耳へ入れておけば、いつの間にか(頭に)残っていて、何かの時に思い出して活かされる時が来るだろうと思っています。
子供にとっては「もう、何度もいいよ」とか「聞きたくないよ」と耳の痛い時もあると思うんですけど、言うべき時は言っておかなきゃいけないと思っています。
石丸:お子さん達が巣立った時に、きっとお父さんの言葉を思い出すでしょうからね。
藤岡:親の愛情には子供を守る責任があるじゃないですか。「いかなることがあろうとも(子供を)命を懸けて守るのは親だ」ということが家訓にあるのでね。子供が未来を創るんだから、家系の中で1番大事ものは、「金」「地位」「名誉」…そんなものじゃない、「子供が宝」なんだと。そういう想いで子供を大事に、真剣に向き合って育てなさいという流れがあるんですが、私としてはその通りだなと思うので、出来るだけ向き合っていきたいなという気持ちですね。
石丸:僕もそうですけど、子供たちは反抗期があったりするじゃないですか。藤岡家のお子さん達は、そういう反抗期は無さそうですね。
藤岡:そうでもないですよ。時々ありますよ。それは子供の成長過程のひとつだから良いんです。喜怒哀楽じゃないけど、いろんな気持ちを出してくれた方がありがたい。むしろ沈黙していて何をやっているかわからないほうが怖いですよ。
石丸:確かにそうですね。
藤岡:怒っても笑っても何をしても良いから、子供たちといつも向き合って“無視はしないぞ”という親の気持ちで接しています。まあ、(親の)気持ちを押し付ける時もありますけど(笑)。
石丸:いや、それは愛ですよ。
藤岡:「親の愛情というのはこういうものだ」ということを、今はわからなくても(いつか)わかってもらえれば良いかなと。私が地上の旅を終えて居なくなった時に「ああ!」と(気付く)時が来ると思うんです。私がそうだから。それで良いと思うんですよ。
“あの時あんなに怒っていたのは、この事だったんだ!”と気付いて、“その時に俺はわからなくてバカだったんだ”と思っても、今は(親は)居ないんですよね。懺悔することも出来ない、後悔しても後の祭りなんですよ。でも、それで良いと思うんです。親との思い出がしっかりと焼きついていれば。
石丸:そうですよね。
藤岡:先祖に感謝する気持ちはそこで残るわけですから。
石丸:やはり親子の絆って、深めていかなくちゃいけませんね。
藤岡:家族の絆、家族愛というのは重要だなと思いますよ。郷土愛、それから国を愛する愛国心、祖国愛、先祖愛…そういうものが無くなったら、人間として楽しくないですよね。
石丸:確かにそうですね。
藤岡:そこには問題がいっぱい出ますけど、その問題を越えることによって知恵が育まれて成長していく。困難を乗り越えて人間は極みに達して成長していくので、人生は「人格」「品格」「品性」を磨くための旅だと思うんです。…と、生意気なことを言ってすいません(笑)。
石丸:いえいえ、何をおっしゃいますか。本当に人生は旅ですものね。
藤岡:「生きて、生きて、何があっても生き抜くことが大事なんだ」ということを子供に伝えたいという想いでね。
石丸:きっとそれはお子さんの心に深く刺さっていると思います。
藤岡さんとお話ししているとあっという間に時間が過ぎるんですけども、1か月に渡って本当に感謝でしかありません。ありがとうございます。これからも素敵な藤岡ファミリーをまた画面で見せてください。
藤岡:ありがとうございます。引き込まれていろいろと話してしまいました。失礼なことを言ったかもしれません。すみません。
石丸:とんでもございません。楽しかったです。今日はどうもありがとうございました。
藤岡:ありがとうございました。