石丸:米村でんじろうさん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは人生で大切にしている“もの”や“こと”をお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせくださいますか。
米村:今日は「実験のアイデア探し」についてです。
石丸:実験をいろいろなさってらっしゃいますけれども、どんな風にしてアイデアを探していらっしゃるんですか?
米村:“無いものを形にしていく”という作業になるので、難しいですよね。ただ何でも良いわけではなくて、イベントや番組で対象は「小さな子供たちです」とか「親子です」とか「大人の方が対象です」とか要望があるわけですよね。それに合わせないと全然ウケないですから。
石丸:やっぱりウケることは大事なんですね。
米村:そうですね。イベントだったら主催者がいますから、「今日は面白かったです。お客さんも皆、喜んで良かったです」って言ってくださると良いんですけど、最悪な時もありますよ。
石丸:そうなんですか。
米村:1回目が良かったからまた呼んでくださったので、今回も頑張ったら、終わってから「前回の方が良かったですね」って言われてガックリ…っていうのがあって(笑)。“伝えるって、とても難しいな”と思うようになりました。教師の時は、授業だから、生徒は嫌でも集まって座っているわけです。でもお客さんだと面白くなかったら集まらないし、嫌だったら寝てますもんね。子供達だったら騒いでますから(面白いかどうか)分かっちゃうんですよね。
だから、実験をどんな風に表現して見せたら(お客さんが)面白がるのかなっていうアイデアを、考えても出てこないので、試行錯誤だけです。いろんなことをやります。例えば「静電気」だったら、静電気の実験に関わることをいっぱいやってみます。
石丸:静電気だと、どんな実験があるんですか? よく下敷きでね。
米村:そう! 子供の髪の毛を立たせたりとか、あと静電気の力で反発させて空中に(何かを)浮かべてみたりします。小さなものを浮かべても(お客さんには)見えないし、インパクトが無いし…ということで、“何か大きくて静電気でパッと浮かぶものは何かないかなぁ”ってずっと考えていて、いろんなものを浮かべてみるわけです。シャボン玉を浮かべてみたり、小さな風船を浮かべてみたり。“まだインパクトないなあ、シャボン玉はすぐ割れちゃうしなあ”と思ってるうちに、プラスチックの荷造りの紐があるじゃないですか。
石丸:ありますね!
米村:あの紐を、応援に使うボンボンみたいに細かく裂いてよく擦ると、静電気でパッと開いてウニみたいな感じになるんですよ。本数をだんだん増やしていくと、花火みたいにスパンっと広がって浮かぶんですよ。大きさを50センチ、1メートルとだんだん大きくしていって浮かべると、インパクトがあって、「おおー!」って皆さん驚いてくださって。
石丸:見栄えが良いですもんね。
米村:「これは静電気の力で反発して浮かんでます。今度はこうすると静電気の力でくっついてきますよね。電気にはプラスとマイナスがあります」みたいな解説をそこに入れます。
だから、“何を浮かべるか”というアイデアは考えても出てこないので、試行錯誤しながら、「犬も歩けば棒に当たる」じゃないですけど、たまたま(良いものに)ぶつかるまで、とにかく探しまくって、試行錯誤してアイデアに出会う。
石丸:じゃあ、ごまんといろんなことをやってきたということですね。
米村:そうですね。例えば年間に100の実験やったとしても、それらは昔からあるやつをちょっと焼き直したり組み合わせたりしているので、大したことがない。でもそういうことをやっている中で、“これ新しいな”“面白いな”ってことがたまたま見つかることがある。例えば、シャボン玉ってすぐ割れちゃうじゃないですか。
石丸:そうですよね。
米村:そこである時、“砂糖を入れると丈夫になる”ってレシピがあって、ありったけの砂糖を入れたんですよ。
石丸:シャボン玉に?
米村:そう。そうして浮かべてみたら乾燥して固まったんですよね。シャボン玉のアメになったんですよ。だからもう割れない。
石丸:割れない!
米村:指でつついてもアメだから割れないんですよ。“あ、いける!”ってことになって、シャボン玉を静電気で浮かべたり操ったり、いろんな実験に派生しました。これも全く瓢箪から駒で、「偶然砂糖をいっぱい入れたら割れないシャボン玉が出来ました」みたいな。
石丸:それは種まで明かしてあげるんですか?
米村:明かします。実験なので秘密が無くて。
石丸:マジックショーじゃないですもんね。
米村:僕、Mr.マリックさんとお仕事をしたことがあるんですけど、僕から見るとMr.マリックさんはイリュージョンでショーとしてすごい完成度が高いから“すごいなぁ”と思っていたら、マリックさんがポツリと「でんじろうさんは実験だから、タネを明かす解説しても良いんだもんね。それが羨ましいです」って。“逆にそこが羨ましいんだな”って思いましたね。
石丸:そうなんですね。
米村:真似をしようと思えば、子供達でもどなたでも真似することが出来る。そこも実験の良い所ですね。
石丸:そうですね。(でんじろうさんの)実験を見たら、多分子供達は家に帰って“自分でやってみたい”って思うでしょうね。
米村:それが一番大切なことですもんね。
石丸:科学を好きになりますしね。これまではいろんな実験を生み出してきたお話でしたが、私もよく知っているこの「空気砲」はどうやって誕生したのか教えていただけますか。
米村:空気砲の元になる煙ですが、タバコを吸って煙で輪っかを作る方がいますよね。
石丸:いらっしゃいますね。
米村:空き箱に穴を開けて、煙を入れてポンポンって叩くと輪っかが出るんです。そういう遊びがあったんです。それが“面白いな”と思ったので、教師だった時にダンボール箱で作ってお線香の煙を入れて、生徒に向かって撃ったんですよ。後ろを向いてる生徒がめちゃくちゃびっくりして「何事だ!?」と思って前を向くわけです。それが楽しくて。
…こちらに、ただのダンボール箱に穴が直径10センチ位ですかね。煙は入れてないですけど。
石丸:側面に穴が開いていますね。
米村:今、少し離れました。バンッ!(箱をたたく音)
石丸:うわっ! 衝撃が来ます。見えない衝撃が私の顔の周りに当たってました。
米村:すごいバサッときますよね。
石丸:これは後ろを向いてる生徒はビックリしますね。
米村:髪の毛がバサッといって振り向くわけです。それが笑えて。
石丸:見てる人の反応も面白いですよね。
米村:反応が面白くて、学校のあちこちで標的を見つけて撃ちまくって。
石丸:(笑)。
米村:それから、フリーになってから色々実験を仕事として紹介する機会が増えてきて、これは自分でも気に入っていた実験だったんですけど、名前が無かったんですよ。どうしても「(これは)何て言うんですか?」ってなりますよね。
石丸:そうですよね。
米村:名前をどうしようかって言っていて、「“空気砲”って、何かにあったなあ。じゃあ、空気砲で」って命名して。そうしたら、すごく覚えやすいし、今みたいに人を撃っても空気だから危なくないし、でも撃つと驚かれるから、何か“砲”って感じがするわけですね。遊び方が少し変わるんです。
石丸:なるほど。
米村:それでバラエティ番組とかで遊んだりとか、色んな広がり方をしました。だからネーミングって大事だなってすごく思いました。
「空気砲」っていう名前のおかげで、昔からあった実験なんだけど、ヒットして皆「空気砲」って言うようになりました。今ではネットで調べたらWikipedia(ウィキペディア)で「空気砲」ってちゃんと出てきます。“あ、一般化した”って(感じました)。
石丸:本当ですね。
米村:元々あるものを少し大きくして遊び方をアレンジして名前を「空気砲」にしたことで、新しい実験に生まれ変わった。
石丸:すごいなあ。この実験は皆さんが聞いてるだけでは一体どんなのか分からないかもしれません。YouTubeで観ることが出来ます。「米村でんじろうサイエンスショー」と検索すれば出てきますか。
米村:はい。
石丸:そちらで是非ご覧になってください。それで家でも作れますね。
米村:空き箱ですからね。これは一番簡単な実験ですね。
石丸:それでお線香とかで煙を溜めて出せば…。
米村:輪っかが見えます。あと、ニオイも飛びますから。
石丸:確かにそうだ!
米村:中に香水でも入れておいて、パーンと撃ったら10メートル離れても飛びますから。
石丸:そんなに飛ぶものなんですか!
米村:この箱でも10 メートルは楽に飛びます。もうちょっと大きいと20メートルでも飛びますから。突然、“お!キンモクセイの香りがしてきた!”みたいになります。
石丸:(キンモクセイの)木は無いのに香りだけ、と。
米村:焼き鳥のニオイを出したらお店が繫盛するかもしれないですね(笑)。
石丸:良いですね(笑)。各お店に忍ばせておきたいですね!
※米村でんじろうさんの公式YouTubeチャンネル「でんじろう先生」は
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