石丸:真中満さん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは、3週に渡って人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしてまいりました4週目は、“時を重ねながら長く大切にしていること”についてお聞きしたいと思います。真中さん、それは何でしょうか。
真中:「ポジティブに考えること」ですね。ちょっと先週と似ているんですけど、大事にしていますね。
石丸:それは、いつ頃から真中さんの中に芽生えたのですか?
真中:(いつ頃からなのか)意識はしていないんですけど、小さい頃からポジティブに、“なるようになるよ”って感じでやってきたのかなと思います。
今回もこのお話を頂いた時に、「真中さん、何かお話はありませんか?」と言われたんですが、“ポジティブに生きてきたことくらいかな”なんて思ったんです。
石丸:(ヤクルト)監督時代にも色々な状況がありました。1年目の時は優勝でしたが、そうじゃない年もありました。そういった(状況が良くない)時はどういう心の持ちようだったのでしょうか。
真中:3年間プロ野球の監督をやらせてもらったんですけど、1年目は優勝で(3年目の)辞める年はダントツの最下位で、96回位負けたんですよ。
僕の考え方とすれば、“3年間で上(優勝)から下(最下位)まで経験できる監督っていないな”って思うんですよ(笑)。そこは開き直ったというよりも、純粋に、非常にポジティブに考えられましたね。
石丸:「次の監督になる人に委ねる方が良い」という決断をされたということですね。
真中:かなり負けこんでいましたけど、シーズン途中で投げ出したくなかったんですよ。だから球団に「申し訳ないですけど、今期は最後までやらせて欲しい」ってお願いしました。
選手に「最後まであきらめるな」とか「絶対投げ出すなよ」とか言ってきた僕が途中で辞任となると、言ってきたことが全て覆ってしまうような気がして、とにかく最後までやりたいなと思ったんです。
石丸:どういう目標を持って、シーズン終わりまでを過ごされたんですか。
真中:僕は、8月末に「辞めます」と発表された後に、ファンの皆さんが分かっているから、少し気分が楽になるかと思ったんです。でも、そこからの1か月が地獄のようでした。
石丸:それはどういうところですか。
真中:選手が奮起して勝ったりしてちょっと良い方向にいくのかなと思ったんですけど、そこから更に全然勝てないんです。だから最後の1か月は苦しかったですね。
石丸:選手達のコンディションや色々な状況で、もう動きようがない1か月ですもんね。
真中:そうです。ファンの皆さんは、借金が20だろうが50だろうが1試合でも勝って欲しいんですよ。だから僕は、1試合勝つ毎に喜ぶファンに、少しでも多く勝ち星をプレゼントしたかったんですけど…。そこだけが悔いが残りますね。ただ、いい経験をさせてもらいました。
石丸:話は変わりますが、最近「eスポーツ」というジャンルのものが世の中に出ております。僕はeスポーツには疎いんですが、そもそもeスポーツというのは、実際に自分がスポーツをするわけではないのですよね?
(※eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称。コンピューターゲーム、ビデオゲームを使ったスポーツ競技のこと)
真中:石丸さん、「そもそもeスポーツというのは、実際に自分がスポーツをするわけではないのですよね?」というのが、ちょっと違うんです。
石丸:違うんですか。
真中:僕は(eスポーツの)野球の「eBASEBALL プロリーグ」の応援監督をやっているんですけど、「eBASEBALL プロリーグ」というのは、「実況パワフルプロ野球シリーズ」(KONAMI)というゲームで戦うんです。これはもう“スポーツ”なんですよ。
石丸:それがもう“スポーツ”なんですね。対戦相手とのやり取りが競技になっているんですね。
真中:今までの(スポーツの)概念を変えて欲しいんですよ。僕たちは50歳ですけど、この世代から上の方って、“汗をかいて苦しまなかったらスポーツじゃない”って思っている人が多いじゃないですか。石丸さんもそうでしょ?
石丸:正にそうです。
真中:そうじゃなくて、この「eBASEBALL プロリーグ」というのは、指先と手先の感覚のスポーツなんです。
石丸:あ、確かに!
真中:“指先や頭脳のスポーツ”と思って良いんですよ。練習量もプロのアスリートと同じくらい練習してますから。
石丸:これは、私のように初めての人間でも、参加しようと思えばできるものなんですよね?
真中:できます。できますけど、30歳を越えると付いていけない位のレベルの高さですから、僕たち50のオッサンが、“よし、今からeスポーツやるぞ!”って簡単にできるものではないです。
石丸:そうなんですね。
真中:それくらいシビアな、アスリート達の戦いになります。今はセ・パ12球団の「eBASEBALL プロリーグ」チームがあるんです。各球団4人ずつ選手がいるのですが、また大会があると思いますので観てもらえたらと思います。
石丸:そのゲームの選手達のデータというのは、実際の選手のデータを連動させているんですか。
真中:そうです。今年ですと、2020年のプロ野球のデータをゲーム機にインプットしていますから、そのデータで戦っていくということになります。
昔はゲームって自分でやるものだったので、人の(ゲーム)を見ているだけじゃつまらないので、自分でやりたいじゃないですか。
石丸:自分でやりたいですね。
真中:でも「eBASEBALL プロリーグ」は、プロのトップレベルの動きを見て“すごいな”と思えるんですよ。
石丸:手に汗握るような試合展開が起こる訳ですね。
真中:起こります。こんなことを言うと12球団の監督に怒られるかもしれないですが、采配面は12球団の監督より考えています。
石丸:そうなんですか(笑)。
真中:ちょっとした投手交代や打順の組み方など、選手の起用法が本当に細かいです。
石丸:じゃあ、今の(12球団の)監督も、それを見て学んでいるかもしれませんね。
真中:はい。ただ、僕があんまり大きな声で言うと怒られちゃいますけど。今、言っちゃいましたけどね(笑)。
石丸:(笑)。
真中:それくらいシビアな采配をします。今回はコロナ禍で期間がずれましたけど、「eBASEBALL プロリーグ」は、NPBの試合が終わってからやるんです。 NPBのシーズン中はプロ野球を楽しんで、日本シリーズが終わった後から「eBASEBALL プロリーグ」で楽しむ。とにかく1年中野球が楽しめるということなんです。
石丸:本当にそうですよね。
真中:僕、良いプレゼンしましたね(笑)。
石丸:しましたね(笑)。
真中:石丸さん、ちょっと観たくなったでしょ。
石丸:がぜん、観たくなりました。だってデータが連動しているんだったら、“あの球団はこの「eBASEBALL プロリーグ」に行ったらどうなるのか”って勝手な妄想をしますね。
真中:毎年ドラフト会議をやって4人の選手を集めるんですよ。そこから戦っていくんです。
石丸:ドラフトもあるんですか!
真中:本格的なんです。
石丸:ですね。ちょっと家に帰ったら観てみます。
真中:観てみてください。面白いと思いますよ。
石丸:話は変わりますが、読書がとてもお好きだと伺いましたけど、どんな本を読まれるのですか?
真中:監督を辞める前までは、移動が多いので、新幹線や飛行機やホテルで1人で暇な時とかにすごく読んでいました。ここ3年ほどは、ほとんど本を読まなくなっちゃったんです。
石丸:それはなぜですか?
真中:今は移動が少ないので、家で1人で本を読んでいても“家族がつまらないかな”ということで、読書のマイブームが去ったんです。
でも読んでいる時は、小説系の本と自己啓発系の本の2冊を必ず自分のバッグに入れて移動していました。
石丸:(読んだ本の中で)心に残っている一文がありましたら教えてください。
真中:色々な本を読み漁ったので誰が書いた本か覚えてないんですけど、「できない理由を探すな」という言葉が非常に(心に)残りました。苦手なことや嫌なことって遠ざけるじゃないですか。“できない理由を探さずに、まずやってみようかな”と思えたんですよね。
石丸:いわゆる「後ろ向きになる」ということじゃ無くて。
真中:僕、この言葉が好きで、この言葉で本を出しているんですよ。
(※『できない理由を探すな! スワローズ真中流「つばめ革命」』ベールボールマガジン社)
石丸:そうなんですね。
真中:唯一出した本なんですけど、あ、全然、営業とか宣伝では無いですからね(笑)。
石丸:これを聞いたら本屋に走りましょう(笑)。
真中:いえいえ(笑)。もう5年ぐらい前に出したんですけど、このフレーズは心に残りましたね。
石丸:そうですか。私も4週お話しさせていただきましたけど、真中さんは前を向いて、いつも風を切っているような人だなって印象を受けましたし、その生き方ってすごく支えになりますよね。人生は色々なことがありますけど、乗り切っていかなくちゃいけませんしね。“一歩足を先に進める”ということなんですね。
真中:そうですね。“まずやってみる”ということですね。
石丸:本当にいろんなお話をありがとうございました。
真中:ありがとうございました。