石丸: 藤井さん、今週もよろしくお願いいたします。このサロンではゲストの皆さんに人生で大切にしている“もの”“こと”をお伺いしています。今日はどんなお話をお聞かせくださいますか?
藤井:今日は「目黒の大鳥神社」です。
石丸:目黒にある、あの神社ですか?
藤井:山手通りと目黒通りの交差点にありますね。東京に初めて住んだのが「ヤマハ音楽振興会」の寮で、チェッカーズ全員で住んでいました。そんなに大きい神社では無いんですけど、その寮のほぼ裏手に大鳥神社がありました。だから東京で初めてお参りした神社が大鳥神社になります。
石丸:ご近所ですもんね。
藤井:初めてのレコードが出るときに“ヒットしますように”とか当然祈願したと思います。そのあと結婚して、初めて子供が産まれた時に住んでいたのも目黒のマンションで。多分歩いて10分以内で大鳥神社に行けたということもあって、自分にとって「氏神様」なんです!
石丸:氏神様! そこでお参りして。
藤井:“あの時もお世話になりました”って。それで、生まれて初めてちゃんと(自分の)事務所を構えたのも目黒だったんです(笑)。
事務所も氏神様が大鳥神社だったんです。そこでソロがすごく安定していったんです。
石丸:そうなんですね。じゃあ、もう守り神ですね。
藤井:今は渋谷区に転居しているんですけど、大鳥神社に3回もご縁があって、その都度うまくいったのでずっと参拝しています。
今でもお正月の三社参りは大鳥神社が入っています。
石丸:これは毎年?
藤井:毎年行きますね。僕は意外と神社のお付き合いが多くて、神社でもたくさんコンサートをしているんですよ。
石丸:そのように伺っています。
藤井:伊勢神宮とか、東京だと明治神宮とか。あとは平安神宮。
石丸:伊勢神宮には2013年に式年遷宮で。
藤井:式年遷宮の奉賛曲として「鎮守の里」というタイトルで出させていただきました。
石丸:「鎮守の里」はどういう経緯で生まれたんですか。
藤井:平安神宮でコンサートやらせてもらった時に、神社本庁の方から「式年遷宮があるので、その歌を作ってくれないか」というお話を受けたんです。
式年遷宮という事すら知らなくて、「社殿を20年に1回建て替えているんですか!? ずっと古いままじゃないんですか!?」みたいな感じで、そういう祭事がある事を知りました。
やっぱり“伊勢神宮を肌で感じて曲を作りたいな”と思って、神宮のほとりを流れている五十鈴川の河原に、ギターと、録音出来る小さいカセットを持っていって作りました。
石丸:現地で、ですね。
藤井:五十鈴川のせせらぎを聴きながら。ちょうど晴れていたので煌めいた川の光が森にキラキラと映るんですよ。そこで“うわ、気持ちいい!”と思いながら作りました。
石丸:想いがしっかりこもった「鎮守の里」という曲ですね。この曲は奉納曲にあたるんですか?
藤井:「奉賛曲(ほうさんきょく)」と言いまして。奉納にも行きましたね。
石丸:そうですか。
藤井:奉納した時は、僕の歌を聴いていらしたのは二人っていうね。
石丸:えっ、どういうことですか?
藤井:神宮の宮司さんたちお二人と私みたいな感じなので、お客さんはゼロですね。
石丸:確かにそうですよね。僕も奉納した事がありますけど、無観客に等しいですよね。でも神聖な感じですね。
藤井:空に向かって歌っている感じでしたね。伊勢の花火大会の時に、曲がかかりながら花火が上がるらしいです。
石丸:それはすごいですね。
さて、明治神宮でコンサートされた当時は、他にコンサートをやった方がいらっしゃらなかったそうですね。
藤井:そうですね。神社の中じゃなくて外(芝地)っていうのはあるんですけど、中(本殿前)というのは滅多に無いと思います。雅楽とかはあると思うんですけど、いわゆるポップスになると(無いと思います)。
明治神宮さんでやらせていただいた時は、「御神体にお尻を向けないでください」と言われたんですね。
他の所は、神社の本殿をバックに、お客さんが本殿の方を向いている感じで歌うことが多いんですよ。明治神宮さんは逆で、「明治神宮に向かって歌ってください」って。
石丸:お客さんはみんな(フミヤさんの)後ろになりますね。
藤井:お客さんには後ろを向いているんですけど、(本殿の)扉を全部開けてくださって。
石丸:本当ですか!
藤井:お客さんに向かって歌っている感じじゃなく、“明治天皇へ歌っている間でお客さんが聴いている”という状況でした。
石丸:明治神宮の中というのは森の中ですし神秘的ですし、不思議な空間で歌えたんですね。
藤井:そうですね。(他にも)嚴島神社とか日光東照宮とか。失礼が無いように曲目やMCは、前もってちゃんと考えます。
この神社はどういう神社であるとか自分なりの説明をちゃんと入れて、そこも失礼がないようにキッチリとします。
石丸:お客さんは、玉砂利の上に椅子を置いて座っていらっしゃる?
藤井:そうですね。椅子を置いています。それはそれで何か特別なコンサートに感じるらしいです。“特別な一夜”という感じ。
石丸:なかなか連れて行ってもらえないような場所で、音楽が聴けるということですね。
藤井:そうですね。なかなか歌えない場所なので、歌っていても特別な感じがしますね。
石丸:今後も続けていこうと思う活動のひとつですか?
藤井:そうですね。こちらから願い出ても歌わせてもらえないので、ご縁があれば、何度でも歌いたいと思いますね。