石丸:このサロンではゲストの皆さんに人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせ頂けますか?
速水:はい! 今日は「海外への旅」についてです。
石丸:今まで、色んな所へいらしてますものね。
速水:そうですね。子供の頃から(海外が)好きで。旅行もですけど、料理をやるようになってから、取材とかも絡めて。
石丸:海外へ取材に、料理を求めて行くと。
速水:そうですね。
石丸:その目線で行くと、一番最初に訪れる場所ってマーケットなのかな、と思うんですけど、どうなんですか?
速水:やっぱり市場には行きますね。その国の空気が分かるし、ある意味台所でもあると思っているので。料理や食に対する情熱が詰まっている、と思っています。
石丸:どこの国の市場に興味をそそられましたか? もちろんいっぱいあると思うけど。
速水:イタリアが良かったです。イタリアに初めて行ったときに、市場で、パニーノだったっけ? ちょっと硬めのパンに生ハムとオニオンとか野菜を(挟んだ)サンドイッチみたいな。それを皆毎朝買うんですって。
なので、僕も買ったんですけど、買ってる人たちは皆片手にワインを一緒に合わせながら…。“えー! 朝からワインを飲みながら? これから仕事ですよね?”っていう(笑)。
石丸:そうだよね(笑)。
速水:でも、「それが日常だ」って言っていて、“いやぁ、洒落てるなぁ”と思ったり。
石丸:それはイタリアならではかもしれませんね。でも食べてみたいな、今の話を聞くと。
速水:凄く美味しかったですね。あと本当に僕が驚いたのは、フランスなんですけれど。ランジスという街で、パリから車で4、50分ぐらいでしょうか。
石丸: ちょっと郊外ですか?
速水:ですね。“本当なの?”って思ったんですけど、東京ドームが50個分ぐらいあるような広い場所で、そこにヨーロッパ全部の新鮮なお肉だったり野菜だったり、もちろんハーブとかフルーツとかいろんなものが揃っているっていう。もう「卸の中の卸」みたいな。
石丸:凄い広いね!
速水:びっくりしましたよ。でかいガレージみたいのがあって、シャッターをガラガラって開けて、吊るされた食材やお肉がブワーって100m以上並んでいるんですよ。
石丸:そうなんだぁ!
速水:料理をされる人はそういう所へ行って。
石丸:処理済みの動物の肉がそこに並んでいると?
速水:お肉とか、お魚と野菜も。そこで皆好きなお肉の部位を買ったり。
石丸:“一体どうやって料理するんだ?”って迷うような物も出てたりしませんか?
速水:よく分からないのもありました。“これって何なんだ?”みたいな。
石丸:ありますか。でもそれは、海外に行って初めて触れられるものだったりするんでしょうね。
速水: “皆こういうのが好きなんだ”とか。そこで食文化をちょっと知れるのが楽しかったりするので。いやぁ、凄かったですね。衝撃でした。
石丸:規模がでかいと、見落としちゃう場所もきっと出てきちゃうよね?
速水:1日じゃ回りきれなくて。
石丸:あぁ、やっぱり。
速水:そこは撮影で行かせて貰ったので。僕は別のロケ場所に行かなきゃいけなかったので、午前中しか居れなかったんですけど。
でも、そこに行くだけで、“これも良い、これも良い”“これ、こんな料理と合わせたらもっと良いんじゃないか”とか。
石丸:楽しいね。
速水:いろいろインスピレーションが、と言いますか…。凄く面白い場所でしたね。
石丸:本当は次の仕事が無ければそこにずっと身を置きたかった、そんな場所?
速水:そうですね。もう住んで通いたいぐらい(笑)。
石丸:そうでしたか(笑)。それは衝撃でしたね。
さて、色んな雑誌とかを拝見したんですが、速水さんがフランスで活躍している、日本人の一流シェフと一緒に料理を作ったりした番組がありましたね。
トップでバリバリやってる日本人シェフ達って、もこみちさんから見てどういう風に映りました?
速水:やっぱり格好良かったですね。自分の国ではない場所で、しかも三大料理の一つ、フランスで勝負をするっていうその気持ちが凄いなぁと思って。
石丸:そうだね。
速水:お話しさせてもらって凄く楽しかったですね。話が合うと言いますか。
石丸:どういう所に共通点がありました?
速水:個性も様々でスタイルが違うんですけど、皆さんのパッションというか、気持ちとか情熱が凄く強かったり。フランス料理なので伝統を守りつつも、ちょっと進化系も作ったりもするじゃないですか。食べても美味しいし、見ても楽しめる料理というのがフランス料理であると思うので、徹底的に皆さん追求してて、凄く面白かったですね。
石丸:また、フランスは星を取るってことに命をかけてるよね。そういうシェフ達の集まりですもんね。
速水:そうですね。みなさん一つ、二つ、(星を)取られてて。
だから本当に貴重な体験と言いましょうか、一緒にその日にしかない、世界でたった一つしかない、僕らにしか作れないレシピを作って。
石丸:凄いね! 格好良いね!
速水:そうしたら、「良かったらそのレシピをお昼に出しませんか?」ってことに。
石丸:おお! お店で!
速水:はい。出したんですよ。
石丸:どうでした?
速水:僕も厨房に立ってドキドキして、良い緊張感で…。楽しかったですね。
石丸:そうですか。
速水:常連さんで、お城を持っている凄いお客さんがいたんですって。
石丸:お城を持っているということは、地位もあるし、色んなものを食べていらっしゃるし。
速水:「え、そんな人が来てるの?」って話になって。
その時に出したメニューが“ウェリントン”と言って、イギリス系なんですけど、フィレ肉の周りにきのこソースみたいなペーストを塗って、それをパイで包んだものに「絵画のような」というテーマで10種類ぐらいのソースを皿の上にアーティスティックにかけたり、ちょっと添えたり…という料理だったんです。それを喜んでくれて、「美味しかった」って言ってくれて。
石丸:そうですか。“見て美味しかった”というのもあったんでしょうね。
速水:嬉しかったですね。料理番組で周りのスタッフさんが皆で一緒にシェアして食べて貰うのとは、ちょっと違う。
石丸:そのレシピは、日本の何処かで、いつか、私、食べれたりするんですか?(笑)
速水:もちろんです。いつでもお声掛け頂ければ(笑)。
石丸:食べてみたいなぁって思いまして。昔、「グランメゾン東京」(TBS)というドラマで…。
速水:観ました! 僕。
石丸:ありがとうございます。イノシシを狩ってる男を演じていたんですけど、ああいうドラマのシーンで観るだけでも、食材に対する想いとかって、物凄くこだわっているじゃないですか。
速水:僕、石丸さんの回、バッチリ観ました。オンタイムで観ていたんですけど、泣きそうになっちゃいまして。猟に出られる方も本当に大変な思いをして。
石丸:ああいう方たちの力で、一つの料理が作られているんですね。
速水:料理をやる人はあくまでも“パイプ”なので。言い方が悪いけれど。大元の、猟に出られている人とか畑を持って食材を育てている人達が一生懸命(食材を)作っているんですよ、というのを届ける、繋げる仕事が料理人なので。
石丸:何か、俳優と似てるよね。書かれている本を僕らパイプが視聴者に届けるという。「料理人=俳優」。そんな気がちょっとしましたね。