石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
石井:今日は「おじいちゃんからもらった言葉」です。
僕が米米CLUBを始める時に、「ダンサーとかいた方がいいんじゃないの」と言ってて、妹がダンスをやっていたので「ちょっと踊らないか?」と誘ったんですよ。
石丸:ちょうど米米CLUBが、いろんなレコード会社が見にくるような時期だったんです。
「今度デビューするぞ」という話になったので、上京するしかないんですよね。
うちのおじいちゃんからしてみたら、孫娘ですから目に入れても痛くないくらいで、俺のことは、ひっぱたくひっぱたく(笑)。
石丸:扱いが違ったんですね(笑)。
石井:明治の男ですから、頑固なんですよ(笑)。
石丸:そんなおじいさまが、どんな言葉を?
石井:「妹を米米CLUBに入れたい」と、相談に行ったんですよね。
おじいちゃんは怒っていて……小さい頃から、お爺ちゃんが横を通っただけで肩がすぼむような感じだったんですよ。
石丸:そんなに怖かったんですね。
石井:そのおじいちゃんが涙ぐんでいるんですよ。「妹を連れて行くんだよな?」って。
石丸:察してらっしゃるんですね。
石井:「でも、おじいちゃん、これデビューなんだよ」って言うと「妹を守れないんだったら置いていけ。守れるんだったら連れて行っていい」と…要するに、“男っていうのは責任があるんだよ”っていうことになるんですよね。
石丸:彼女の人生を、ということですね。
石井:そうですね。「俺は、おまえにこの命を預けるんだから、おまえは命かけて妹を守れるんだったら連れて行け」と。
石丸:お嫁さんに出すみたいな感じになっていますけど、それはひとつの仕事をするケジメをつけろということですよね。
石井:そうでしょうね。おじいちゃんから、家業の「饅頭屋をやれ」という言葉は一回も出たことがないんですよ。
おじいちゃんも親父も、“外に行って何かやりなさい”という感じで育てられたので、「責任」という言葉が、おじいちゃんから言われるというのはすごく大きかったですね。
それまで怒られっぱなしでしたから。
石丸:いざを作る時に、妹さんを「仲間に入れるぞ」という時の覚悟を聞きたかったんでしょうね。
当時、石井さんは何歳だったんですか?
石井:僕が23、4歳くらいで、妹が21歳くらいですね。
その時に、「いっぱしの男なんだから、兄貴として、妹の人生をぶち壊すようなまねだけはするな、それがおまえの責任だ。そ
れができるんだったら連れて行け」と言われて、あれは大きかったですね。
石丸:その時、石井さんは何て言われたんですか?
石井:もう「はい」しか言えないですよ(笑)。
妹は妹で張り切っちゃってるし、しょうがないなって「バンド内恋愛はダメね! クビね!」と言っていたんです。
石丸:言っていたのに(笑)
石井:なのにバンド内で結婚しちゃって(笑)。
「美奈子さんをいただきたいと思います!」と頭下げられた時には、悲しさと怒りと…なんだろう(笑)。
石丸:おじいさんが、石井さんに妹さんを託す時の気持ちが分かった時じゃないですか?
石井:分かったんですよ! おじいちゃんが、どれだけあの時に不安だったか、とかね。
やっぱり、「責任」と言ったのは、そこだったんだなと思いましたね。
おじいちゃんが言った言葉って、大きいんだなと思いました。
石丸:ここで分かったわけですね。
石井:責任をとるということが、どれだけ重いことで、すごいことなのかっていうのを、おじいちゃんに教えてもらいました。