石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
東儀:それでは、超楽観的思考ということでいかがでしょうか?
石丸:今まで話してくださった中で、“楽観的にものをとらえる方だな”と思っていましたが、そこに“超”が付くのですね?
東儀:東儀秀樹像って、一般的に石橋を叩くタイプだと思われやすいですし、すごく神経質で、真面目で、堅苦しいイメージがあると思います。
もちろん、そういう部分もあるんですけど真逆なんですよ。ちょっとやそっとじゃへこたれないし、よく「プラス思考だね」って言われるんだけど、プラス思考っていう言葉も僕は使わないぐらい超えているんです(笑)。
石丸:超えているんですね(笑)。
東儀:僕はプラス思考という言葉が嫌いなんです。プラス思考という言葉は、マイナス思考の人が自分に言い聞かせるための手段としてよく使われるから、根が楽観的でプラス思考の人はプラス思考とは思わないんですよね。
石丸:“超”が付くことになった、きっかけがあったら教えてください。
東儀:きっかけではないのですが、例えば25、6歳の時に癌になったんですよ。
膝のお皿の中に腫瘍ができて、最初はそれが癌だと分からないまま「あってはいけない場所にあるものだから手術して取り出しましょう」と、簡単に済むと言われていたのですが、なかなか退院させてもらえなくて。
ある時に、医者と母親だけが話しする場面があって、“おかしいな”と思った僕は後をつけて話を聞いていたんです。
石丸:そうなんですね。
東儀:すると、悪性の腫瘍だという結果が出て、“余命1年ほどの覚悟をしてください”という話を親が聞いているんですよ。
その時ですら僕は全然怖くなくて、“僕は26、7歳で死ぬんだな”と思いました。この話を聞いているところを見られると、周りが動揺するから、“これはやばい”と思って、急いで病室に戻って寝たふりをしていました。
石丸:ご自身がショックを受けるわけではなく、それを隠れて聞いてることを気づかれちゃうと…と。
東儀:長く生きることが幸せかというと、それも疑問があるじゃないですか? 濃くて、“楽しかった”と言って死ぬのであれば、それはとても良い人生だから、あと1年で僕は楽しかった人生で終えるんだと思ったんですよ。
“これは病気で寝ていられないぞ”と、時々病院から抜け出してドライブしに行ったりして。“退院してからのために”ということを考えていないんですよ。“あの時やっておけば良かったな”と思って死にたくないから。
石丸:そうですよね。
東儀:後悔しないように思いついたことは全部やっていく。
お見舞いに来た友達とのくだらない日常会話を思いっきり楽しんだり、病院の食事を“これはまずい!”ということを噛み締めたり(笑)。
とにかく本気で全部生きて、“ここまでやったんだから十分だ”という気持ちで死んだら、きっと周りも“生き生きして死んでいったね”と思ってくれるだろうし、僕もそう思って死にたいから。
そう思っていたら、だんだん体の調子が良くなっていくんですよ。
石丸:そうだったんですか。
東儀:担当医が足を付け根から切り落とせば、さらに1年は延命するだろうということで、切る用意をしていたらしいんですよ。すると、“この患者はちょっと普通じゃないぞ、日に日に元気になっていく”ってことになり、切ることを止めてくれたみたいなんです。さらに、通院をすることを条件に退院、というところまでいったんですよ。
石丸:東儀さんの、“楽しもう”と思っている考え方が癌を無くしたということですか?
東儀:僕はよく言うんだけれど、「ワクワク細胞」を誰でも持っていて、それを活性させるか、させないかっていうのは、本人の意思にかかっているんですよ。自分が癌だと知った時に、“なんで僕が_……”というような、マイナスな事に打ちひしがれていたら、たぶん僕は1年後に死んでいた気がします。
“死ぬ”ということに重きを感じないから、癌細胞が「なんだよ、つまんねーな!」と思ったと思うんですよ。
石丸:張り合いがなかったんですね(笑)。
東儀:僕の勝ちですよね。退院した瞬間に「ラッキー!」と言って、通院しないでそのままなんですよ。
痛くなったり、おかしくなったら病院に行こうぐらいに思っていたんだけれど、全く痛みも出なかったので、そのまま今日まで何十年も生きていますから。
石丸:じゃあ、もう癌はなくなってますね。
東儀:きっとなくなってますね、あるのかもしれないけど悪くはなってないですからね。