石丸:池井戸さん、このサロン最初のゲストとしてお越しいただきありがとうございます。ここでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしてまいりますが、今週はどんなお話をお聞かせいただけますか?
池井戸:今日は「音楽」についてです。
石丸:一気に身近に感じる話題です。演奏されるのですか、それとも、お聴きになる?
池井戸:演奏は、昔、ピアノを弾いていたのですが、とっくに引退しまして、いま弾くと、敬老会の運動会みたいになってしまいますので(笑)、最近はもっぱら聴くばかりですね。
石丸:どのようなジャンルの音楽を聴いてらっしゃるのですか?
池井戸:クラシックから入り、だんだんとミュージカルにも広がっていきまして。
石丸:私としては、いっそう身近に感じますね。
池井戸:石丸さんの舞台も、何回も拝見しました。
石丸:ありがとうございます。今日は、クラシックについて伺いたいのですが、特に好きな作曲家は?
池井戸:昔はベートーヴェンが好きだったんですよね。年を取るにつれ、ショパンとかに変わってきて。最近はオペラを良く聴きますね。オペラの良い楽曲ばかりを集めてある音源があって、これがなかなかいいんですよ。全部続けて聴くと5時間くらいになるのだけど(笑)。
石丸:それだけをじっと聴いてるわけではないですよね? 何かなさりながらですか?
池井戸:さすがに一気には聴けないので、だいたい夜、仕事が終わった後に、少し聴いて、そのまま寝落ちするみたいなね。
石丸:クールダウンのために聴かれていると。
池井戸:そうですね。昔はCDだから、長くても2時間以内に終わるでしょ? ところが今はダウンロードなので、同じ作曲家、演奏家の楽曲が5時間ぐらい流れたりするんですよね。朝起きてもまだ鳴ってるみたいな(笑)。
石丸:音楽は何で聴かれるんですか?
池井戸: iPhoneからBluetoothで飛ばしてスピーカーで聴いているんですよ。面白いことに、これがいい音するんですよね。
石丸:そうそう、小さくても機能が良いものありますもんね。
池井戸:いい音しますよね。そのスピーカーは2つぐらい持ってます。
石丸:執筆される部屋にも置いていたり?
池井戸:さすがに書く時は無音派ですね。
石丸:では、今までライブで聴いた中で、ベストだったコンサートは何ですか?
池井戸:去年の夏に、(ピアニストの)アルゲリッチのコンサートに行ったんですよ。なんと熱海のMOA美術館の能楽堂で、マイスキーのチェロと。
石丸:しびれますね!
池井戸:何がしびれるって、開演時間になってるのに、まだピアノを調律中(笑)。
石丸:観客はきっちり座ってるのに?
池井戸:全員着席して待ってる中で、調律の人がポンポンとやってるんですよね。“これはいつから始まるのかな?”っていう(笑)。
石丸:まるで演出のようですね。
池井戸:じっさい記憶に残る演奏で。それは人生二度目でしたね。
石丸:え? 一度目はいつですか?
池井戸:高校生の頃、名古屋でウラディーミル・アシュケナージのコンサートに行きまして、これがすごくいいコンサートだったんですよね。
石丸:アシュケナージのピアノですね。
池井戸:そうですね。最後が、ショパンのスケルツォ4番だったと思いますけど、良かったですね。この2つはお宝ですね。どちらも、甲乙つけがたい素晴らしいコンサートでした。