石丸: 藤井フミヤさん、これから4週間に渡りどうぞよろしくお願いいたします。このサロンではゲストの皆さんに人生で大切にしている“もの”、 “こと”、“場所”についてお伺いしています。今日はどんなお話をお聞かせくださいますか?
藤井:今日は「ギター」についてです。
石丸:ギターはいつ頃始めたのですか?
藤井:中学校1年ですね。きっかけは、ロックンロールのバンドを組もうと思って、最初にエレキギターを買いました。でもコードがあるとか知らずに、勢いで買ったんです。
石丸:いわゆる“フォルムが好き”とかで?
藤井:そう(笑)。本当はストラトのギターの音を出したかったのに、知らないでテレキャスターを買っちゃって。友達はストラトのギターを持っていたので「なんでお前のギターはその音が出るのに、俺のは出ないんだ?」みたいな。
石丸: まだそのギターは持っていますか?
藤井:いや、友達に貸して質屋に入れられちゃいました。
石丸:えー! 本当ですか(笑)。
藤井:あれは、忘れもしない中3の夏(笑)。“弾けもしないのに何でコイツ借りるんだろう?”と思っていたら。
石丸:(質屋に)入れられちゃった、と。
藤井:ヒドイやつですよ(笑)。
石丸:それでは、本格的に(ギターに)向き合った時の話を聞かせてください。
藤井:ソロになってからですね。チェッカーズはバンドだったので、ギターを弾く必要性がそれほど無くて。
石丸:ボーカルでしたよね。
藤井:ボーカルですね。解散した時に、“これから作曲もしていった方が良いのかなぁ”と思って、本格的にちゃんとしたギターを買おうと。たまたまロサンゼルスに遊びに行っていた時に、イギリスのシンプリー・レッド(Simply Red)というバンドに入っていた鈴木賢司というギタリストに選んでもらったんです。
石丸:「選定」ってやつですね。
藤井:そう、分からないから。値段はある程度いっても、俺が弾きやすくて良いやつならいいやと覚悟して。
石丸:どういうギターか説明して頂いても良いですか?
藤井:「ギブソン(Gibson)」というブランドの「B-25」というギターです。
石丸:ギターを知っている人は、“おぉ!”ってなるものですか?
藤井:「B-25」にも色々あるんですよ。その「B-25」の中の1本ですね。ネックがエレキギター並みに細くて、手が小さい僕でも弾きやすいんです。それで「TRUE LOVE」を作った、という。
石丸:ギターをきっちり弾けるようになってから「TRUE LOVE」が生まれてきたんですか?
藤井:ギターはある程度のコードは弾けたんです。難しいセブンスとかナインスやディミニッシュとかはあんまり知らずに作ったので、「TRUE LOVE」って、未だに初心者ギターの教則本に載るんです。
F(コード)さえ弾ければ、全部弾けるんですよ。だから今のミュージシャンになったギタリストの人達も若い子達も、“初めてコピーしたのは「TRUE LOVE」です”っていう人が比較的多くて。
石丸:クラシックを弾くギタリストが「禁じられた遊び」を弾くみたいな感じですか?
藤井:そうそう、そんな感じです。本当に簡単なコードで作って良かったなぁと。知らなかっただけですけど(笑)。
石丸:いや、「TRUE LOVE」ってすごく耳なじみが良くて、覚えやすくて、口ずさみ易いじゃないですか。比較的分かりやすいコードが繋がって出来ているからかもしれないですね。
藤井:そうだと思いますね。
石丸:「TRUE LOVE」は大ヒットしましたよね。ダブルミリオン、200万枚。
藤井:ありがたい事にソロになって一発目のシングルでヒットしました。よく言うんですけど、私が死んだら出棺の時は「TRUE LOVE」がかかるし、ワイドショーでもかかるでしょうね(笑)。
石丸:(笑)。「フミヤさん=TRUE LOVE」になっていますもんね。
藤井:今のところそうなっていますね。これを超える曲を作らない限りは、僕の出棺の曲は「TRUE LOVE」ということになっていますね(笑)。
石丸:曲を変えるチャレンジはありますか?
藤井:分からないです。例えば美空ひばりさんのパッと思い浮かぶ代表曲は「川の流れのように」や「愛燦燦」という人生後半の曲ですから。
石丸:では、出棺の時の曲も変わるかも、しれないですね。