石丸:このサロンでは3週にわたって、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしてきましたが、最終週は “時を重ねながら、長く大切にしている“こと”についてお伺いします。関根さん、それは何でしょうか?
関根:それは「ゴルフ」です。
石丸:「ゴルフ」! ということは、関根さんのゴルフ歴は?
関根:長いですね。事務所の浅井社長がゴルフ大好きで。今でも覚えてますよ。74年の12月に事務所に入り、その半年後の75年の5月くらいに、「関根君、ゴルフをやって人生を学びなさい!」と、ワンセット、ポンっと!
石丸:クラブを!?
関根:21歳の僕は、“ゴルフで人生を学べってどういうことなのかな?”と。今でこそ若い人達もゴルフをやっていますけど、当時は会社の重役クラスがやっている感じですよ。
石丸:ああ、そうか。「大人の社交場」ですよね。
関根:だから、“えー、どうしたら良いんだろう?”と思っていたら、社長に「関根君行くぞ!」と浅井企画のコンペに呼ばれて、社長のホームコースへ行ってね。
今はYouTubeでもレッスン動画を観れますし、雑誌も色々と出てますけども、当時はレッスン書もなければレッスン番組もほとんどなかったんです。だから、最初はちっとも楽しくなかったですよ。酷い目にあって。でもね、年に2、3回コンペがあるんですよ。そうすると、迷惑をかけるから、コンペの一週間前くらいから練習に行くわけですよ。そうして回数を重ねるうちに、徐々に上手くなっていくんですね。
石丸:そうでしたか。
関根:なんだかんだ慣れていくんですよね。“ああゴルフって良いなぁ”なんて思って、23歳くらいの時にクラブを見に行ったら、「あなたのゴルフスイングを診断して適切なクラブをお作り致します」という看板が目に入って。
“どうせなら診断して貰おう!”と思って、(スイングを)ビデオに撮って貰ってチェックしたら、僕のスイングはオーバースイングで身体の芯が崩れてしまっているんですよ。「クラブが出来るまで2ヶ月かかりますから、無料でやるので、フォーム直しましょう。来てください!」って言われて、週に2、3回通ったんですよ。
石丸:凄い! その当時、自分のフォームをビデオで見るということは中々ないですよね。
関根:それでメチャメチャしごかれて…。僕、お客さんですよ?
石丸:まあそうですよね(笑)。
関根:結構な値段の物を買っているのに、「違う! そうじゃないっ!」(笑)。
石丸:スパルタ(笑)。
関根:“佐藤さん”って方ですよ(笑)。そこから上手くなって、ゴルフが好きになって。
最初は(プレー中)前ばかり見ていたんですね。林に入っても、前方の細い所を抜けようとしてね。無理ばっかりしてたんですよ。超えられもしない池を越えようとして、池に入れてしまったりね。
後でスコアを見ると、“100を切れなかった。あの林の時に横に出しておけば100切れたんだな”って思うわけですよ。それからは学んで、前方の狭い所よりも一番広い所に一回出してやり直すようになりました。
それで“あっ、社長はこれを教えたかったんだ!”と気がついたわけです。“きっと人生もそういうことなんだ!”と。「無茶なチャレンジはいけないけど、8割以上成功するならチャレンジしよう!」こういう事を社長は言いたかったんだと思ってね。
石丸:凄いですね。浅井社長は、関根さんはそういう事を学べる人なんだという事を見通して、「関根君、ゴルフをやって人生を学びなさい!」と言ったんでしょうね。
関根:どうか分からないんですけどね。その後も色々な事を学びました。例えば、良いスコアを出したいので、OBを出すと…OBは設定していたコースより外にボールが行ってしまうとペナルティを貰うんですよね。だからOBを出す度に自分に怒っていたんです。
今でも覚えています。27歳の時、芦の湖カントリークラブでした。打ったらOBでした。でも、その時は怒りが湧いてこなかったんですよ。
石丸:それはなぜですか?
関根:“当然だよな”って思ったんです。“ジャンボ尾崎さん、中嶋常幸さん、青木功さんたちが何億回もショットを打って24時間ゴルフの事だけ考えて、あれだけゴルフに命を賭けている人達でさえOBを打つんだよ。ろくすっぽ練習もしないで、たまにコースを回る素人が何をOB打って怒っているんだよ”と、そこで悟ったんですよ。そこからは、OBに対してがっかりはしますけど、怒らなくなりました。
石丸:“怒り”にはならなかった。
関根:ある時、短い距離のパットが入らなくなってしまったんですよ。精神的に怖くてイップス(主に精神的な原因で思い通りのプレーができなくなる症状)みたいになっちゃって。“なんでなんだろうなぁ”と思った時に、ハッと気がついたんです。“ゴルフが出来ているからだ”と思ったんですよ。
石丸:ゴルフが出来ているから?
関根:健康で仲間がいて。
石丸:そういうことですね!
関根:ゴルフが出来るから、そこにパットの悩みも含まれている。それが、ゴルフをしたくても出来ない人もいるわけです。友達がいないとかね。“なんだ! 贅沢言っているんじゃないよ”と、ゴルフが出来る喜びの中に(悩みも)含まれているんだよと気がついたわけです。そしたら少しずつですが、パットが入るようになりました。
石丸:それは、呪縛から…。
関根:逃れられました。
石丸:色々な事を学べるものですね。
関根:学んだんですよ。ある時、一緒にゴルフを回っていた先輩の調子が悪かったんですよ。そしたら、普段そんな人じゃないのに不貞腐れちゃって。だから僕は「先輩、そんなに落ち込まないでくださいよ。先輩にはゴルフをやる体力、健康、それだけの余裕を持てる収入があるじゃないですか。そして少なくとも僕ら3人の友達がいるじゃないですか。楽しくやりましょうよ」って言ったんです。そしたらその先輩は、「良いこと言われた」って言ってね。そこから機嫌が直ったんですよ。
石丸:自分を追い詰めていた気持ちから救われたんでしょうね。
関根:後から聞いた話だと、その先輩が「関根君に俺は諭されたんだ」って言っていたそうです。
石丸:そうなんですね。それは関根さんがゴルフを通して身をもって学んだ事をお伝えしたということですね。
関根:浅井社長が僕に教えてくれたことですよね。
石丸:「趣味はゴルフだけだ」と伺ってますけども、なぜゴルフだけなんですか?
関根:他の趣味もあるんですよ。例えば格闘技観戦とか、映画鑑賞とか。でも、100%仕事から離れられないんですよ。例えば映画を観に行きますよね。『ゴーストバスターズ』なんか観ると、物凄く良い間で笑いをとるんですよ。そうすると、“良い間だなぁ”とかね。あと、“こういうストーリーが日本の映画界では何故企画に通らないんだろう?”とかね。自分の芸能生活から100%離れないんですよ。
石丸:分かります! そうですよねぇ。
関根:舞台を観ても、“臭いことやっているなぁ”とか、”この人上手いなぁ”とかね。
ミュージカル『アニー』を観に行った時に、財津一朗さんがお金持ちの役をやっていたんですよ。小堺(一機)君と観て、青山劇場を出て、「俺たちの目指す山はなんて高いんだろう……。財津さん!」って言ってね。
石丸:本当に、その作品を楽しむだけじゃなくなりますよね。
関根:スポーツを観ていても、新人だった人が上手くなってたり強くなっていったりして、3年ぐらいかけてチャンピオンになったりするわけですよ。そうすると“俺は3年間何をやってたかなぁ”って、マイナスなことも考えちゃうんですよ。
石丸:そこを自分に置き換えちゃうんですね(笑)。
関根:そうなんですよ(笑)。その点、ゴルフは芸能生活と全く関係ないんですよ。
石丸:そういうことですね。確かに自分を開放出来ますもんね。
関根:青空の下、「うわー!」とか言ってね。
石丸:やめられない理由はそこなんですかね?
関根:そうなんですよ。開放されちゃってね。ゴルフをやると、体は疲れるんですけど、脳が活性化されて、次の日にお仕事に行くと頭の回転が良いんですよね。
やっぱり本業と関係ないから、“開放される”ことで脳の疲れも取れるんでしょうね。