⚫心躍る瞬間「高校3年の時、学園祭でアカペラを歌って歓声をもらった瞬間」
松下:今月お迎えするゲストは、ゴスペラーズの黒沢 薫さんです。よろしくお願いいたします。
黒沢:よろしくお願いします。
松下:“初めまして”というのも何ですが、音楽番組でご一緒した時にご挨拶させていただきました。
黒沢:そうですね。本当にご挨拶しただけなので、今回じっくりお話が出来るのが楽しみです。
松下:私の青春はゴスペラーズさんの音楽なので、本当にいろんな曲を聴いていました。
黒沢:僕もドラマなどでよく観させていただいています。
松下:今日はいろいろなお話をお伺い出来るのを楽しみにしております。
まずは黒沢さんの“心躍る瞬間”について伺っていきます。1週目の今日、お話いただくのはどんな瞬間でしょうか?
黒沢:僕が“心躍った瞬間”は「高校3年の時、学園祭でアカペラを歌って歓声をもらった瞬間」です。
松下:それでは時計の針をその瞬間にしていきましょう。
学園祭でアカペラって、珍しいシチュエーションかなと思いますが…。
黒沢:そうですね。当時としては本当に変わっていたと思います。
僕は楽器が出来ませんで…でも歌は好きだったので、「バンドのボーカルをやってみないか」と誘われたこともあるんですが、結局うまくいかなかったんです。
“どうしようかな”と思っていた時に、高校3年生の時のクラスメイトに、村上てつやという男がおりまして。
松下:もう…村上さんですよね(笑)。
黒沢:そうです。うちのリーダーなんですけれど(笑)。
リーダーが「アカペラをやろう」と2人のクラスメイトに声をかけたんですが、流石に3人だとアカペラにならないから、もう1人くらい入れたいと思っているところに、“あいつ、歌が上手いらしいぞ”と僕のうわさを聞きつけたらしく。
体育の授業の時に「このパート出来る?」と聞いてきたので、体育館の隅の方で歌ったら、「ああ、出来るじゃん。じゃあ、一緒にアカペラやらない?」と言われたんです。
僕はアカペラを知っていたし、好きだったので、「ああ、やるやる」と。
松下:そんな即答で?
黒沢:むしろやってみたかったんです。ずっと音楽活動をしたかったので。
それで学園祭で歌うことになったんですが、詰襟の学生服を中に折り込んでジャケットみたいにして(着て)立ってハモり始めた瞬間に、体育館の後ろから前に向かって歓声がワーッと来たんです。
もちろん人生で初めての経験で、あれは今でも思い出すくらい鳥肌が立つ瞬間でした。
“これは…ひょっとしたら俺たちイケてるんじゃね?”みたいな(笑)。“音楽をやってみた方が良いんじゃないか”と、その時に思ったんです。
松下:体育館にはどれくらいのお客さんがいたんですか?
黒沢:今考えると300~400人だったと思うんですが、体育館の後ろの方まで人がいました。
当時歌った曲は、山下達郎さんがカバーしていたドゥーワップの名曲だったり、ビリー・ジョエルの「The Longest Time」とか。
松下:なんだか大人! 高校生ですよね。
黒沢:そうなんです。すごく大人っぽい音楽が好きな連中が集まっていて。
松下:高校生の時はそういうジャンルの音楽をお聴きになっていたんですね。
黒沢:僕は聴いていました。シティポップも聴いていましたし。ただ、当時はJ-ROCKやバンドブーム全盛期で、同級生と音楽の話が全く合わないんですよ。
松下:そこに村上さんがいらして。
黒沢:そうなんです。村上は、当時からロックや歌謡曲も好きだけど、洋楽とかも聴いている印象でした。ゴスペラーズのリーダーと最古参のメンバーなので(笑)。
松下:ゴスペラーズの始まりですね。
黒沢:そうですね。ゴスペラーズの始まりということになります。
松下:きっと、その時に聴いたお客さんは、“あの時の!”ってなっていらっしゃいますよね。
黒沢:なによりも、“(アカペラは)お金もかからないし、それに目立つぞ!”とその時に思いました。結局その後に一度(活動は)途切れるんですが、村上が一浪して早稲田大学に入ったんです。それで僕に「早稲田にアカペラのサークルがあるぞ」と言ってきて、「え!?」みたいな。
松下:すごい。運命ですね。
黒沢:それで(サークルに)入って、人生が動き始めたんです。
松下:ターニングポイントというか、高校3年生の時にゴスペラーズは出来上がっていたんですね。
黒沢:誕生の瞬間ですね。
⚫クロニクル・プレイリスト「Just feel it / ゴスペラーズ」
松下:この番組では、ゲストの方の“心躍る瞬間”にまつわる思い出深い曲やその時代の印象深い1曲を“音楽の年代記”=「クロニクル・プレイリスト」としてお届けしています。今日はどんな曲でしょうか?
黒沢:僕、黒沢 薫が生まれて初めて作った曲です。
松下:生まれて初めて!
黒沢:そうなんです。
松下:それまで、作曲というのは?
黒沢:そういう考えがあまりなかったんです。アカペラは、カバーミュージックというか、カバーが主体のものが多かったので。
ゴスペラーズが今のメンバーになる前、同級生で組んでいた頃に、「やっぱりオリジナルを作らなきゃダメだよね」という話になって、何曲かオリジナルを作ったんです。それは後々形になっているものばかりなんですけれど。
それで「黒沢も何か作りなよ」と言われて、一生懸命“作った”というか、当時は声だけですよね。「こういう感じ」と言って(聴かせた)。
松下:じゃあ、レコーダーとかに声を吹き込んで。
黒沢:そうですね。それを後でちゃんと1曲にしてくれたという。
松下:でも、ここが第1曲目ですよね。
黒沢:そうなんです。
松下:これが何年前になるんですか?
黒沢:31年くらい前です。
松下:そんなに前に生まれていた曲なんですね。
黒沢:しかも最初はメロディそのものがないんですよね。最初はテーマでサビの後にコーラスリフが出てくるんですが、そこから作りました。
松下:すごいなぁ。
黒沢:ここからメロディだけ作っておいておいたというか。
松下:今、聴いてみて、改めてどうですか?
黒沢:今聴くと、すごくゴージャスなミュージシャンの方たちが一流の演奏をしてくださっているんです。“自分の作った曲がこんなにキラキラとカッコ良くなるなんて、プロってすごい”と思った曲ですね。
松下:私も曲を作ることはあるんですけれど、メロディを考えて、そこにいろんなリズムを足してもらえますしね。
黒沢:そうですね。
松下:そこから皆さんが演奏してくれることで別のものに感じる時があるんです。
黒沢:今だと「トップライン」なんて言い方をしますけれど、メロディと軽いコードのイメージだけで作ったものなので。もちろん小西(貴雄)さんというアレンジャーの方にもグワッと広げていただいて、“めちゃくちゃ良い曲になってる!”と、すごく興奮しました。
松下:30年経っている今聴いても、古いという感じが全くないんです。
黒沢:ありがとうございます。
今ちょうどシティポップブームがきていますから、むしろそういうことですよね。当時は90年代の大学生がやるには大人過ぎたサウンドだと思います。
松下:オシャレです。
黒沢:“お前たち、なんでこれをやろうと思った?”という感じだったと思うんですけど(笑)。
松下:そして、ゴスペラーズさんは30周年を迎えるということで、改めましておめでとうございます。
黒沢:ありがとうございます。
松下:先月11月13日には、30周年を記念したEP「Pearl」をリリースされました。
そして今月は、カップリングコレクションやライブ、そして、メジャーデビュー記念日と続きます。 改めて、今のお気持ちはいかがですか?
黒沢:やっぱり無我夢中でやっていたという部分もあるので、そこまで30年をイメージしていたわけではないんです。大体、30年やるような人は、僕らがデビューした時にはすごく少なかったんです。なのでそんなことは何も考えていないし、ただ目の前にあるものを一生懸命やっていたら、いつの間にか30年になっちゃうなと。
途中から音楽業界が周年を祝うようになってきて。
松下:節目をね。
黒沢:めちゃくちゃ祝ってくれるので、途中から認識し始めたんですけれど(笑)。“あ、もう20年か”って。
松下:(笑)。周りの皆さんに言われて気付くんですね。
黒沢:そうなんです。“あ、25年か”みたいに。
今回のEP「Pearl」に関しては、メンバー全員自分たちで曲を作れるので、「せっかくだから共作で作ってみようか」ということで。今回はメンバーとライティングセッションするような形で曲を作っています。
松下:面白いですね。また新たな形で、新たな節目を迎えますね。
黒沢:今までもやっていたんですが、今までよりもだいぶ普通に、ライティングセッションっぽく出来るように。誰がどこを担当、というだけではなくて、全部にみんなが口を出して1曲を作り上げる、ということが今回は出来た気がします。
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<松下さん衣装>
カーディガン:ダーマ・コレクション / DAMA collection 0120-337-337
スカート:シヅカコムロ / 4298 SHIZUKA KOMURO 03-3463-4015
スタイリスト:大沼こずえ
ヘアメイク:山科美佳
- ゲストが語る“心躍る瞬間”や“エピソード”
その時に刻まれた思い出の1曲。
または、その時代の印象的な楽曲。