⚫心躍る瞬間「デビュー作の舞台『BOYS TIME』」
松下:先週は放送中の連続ドラマ『THE3名様Ω』のお話でしたが、今週も佐藤さんの“心躍る瞬間”について伺っていきます。今日お話いただくのはどんな瞬間でしょうか?
佐藤:はい。私が“心躍った瞬間”は「デビュー作の舞台『BOYS TIME』」です。
松下:それでは時計の針をその瞬間に戻していきましょう。
佐藤: 1999年から2000年にかけて上演された作品です。
松下:この世界に入られたきっかけは舞台だったんですか?
佐藤:そうです。大学2年生の時にこの舞台の一般応募の情報を知りまして、それで応募しました。
松下:オーディションということですか?
佐藤:はい。そこで合格して、そこからこの仕事を始めたという感じです。
松下:ご自身で応募されたんですか?
佐藤:そうなんです。ただ、ミュージカルだったんですが、僕は歌もダンスも全く出来ないんです。それなのになぜこのオーディションに応募したかというと、(舞台の)曲を、全部ウルフルズさんが担当されるということだったからなんです。
松下:そうなんですね。
佐藤:この作品は男性10人の芝居なんですけれど、「今回は技術というよりはガッツとパワーのある男性陣を募集します」ということだった。
僕は歌のスキルもなければ踊れもしないけれど、ウルフルズが大好きなので、“そこの熱量は負けないぞ”みたいな気持ちはありましたね。
松下:なるほど。
佐藤:そもそもは、大学の同級生に「ウルフルズのCDを貸して」と言われたところから始まったんですよ。
彼は僕がウルフルズが好きなことを知っていて、「今度こういうオークションがあって、履歴書と一緒に課題曲としてこの曲を歌わないといけないんだけど、隆太だったらCDを持っていると思って。貸して」と言われて、僕も「なにそれ、俺も絶対に受ける」と言って。
松下:それが最初だったんですね。
佐藤:(友達に)大感謝ですよ。彼がもしCDレンタルとかのバイトをしていたら、僕はそのオーディションを知らないままですからね。
松下:そうですよね。今、ここに座っていらっしゃらないかもしれない。
佐藤:かもしれないですよね。
松下:そんな出会いがあるんですね。総合演出が宮本亜門さんで、しかもPARCO劇場。共演に藤井隆さん、森山未來さん、そして、山本耕史さんとそうそうたるメンバーの方がいらっしゃる中で、怖さとか、“どうしよう”とか、そういうことは感じませんでしたか?
佐藤:今思うと、自分でも、よくあんなテンションでオーディションを受けられたなと…想像すると怖いですよ。
松下:オーディションはどんな感じだったんですか?
佐藤:人生初のオーディションだったんです。書類(審査)を通していただいて、フジテレビの本社へ行って、そこで歌ったり、踊ったり…お芝居もあったのかな?初めてだから本当に分からないんですよ。でもすごく覚えているのは、当時は金髪というか白髪にしていて、オーディションにも何を着ていったら良いのか分からないから、「動きやすい格好で」と言われたので、兄貴のジャージのズボンを借りて(笑)。
松下:(笑)。
佐藤:あと、前々日が大学の文化祭だったんですよ。ちゃんとプリントしてTシャツを作るお金もなかったので、真っ白のTシャツに寄せ書きで文化祭Tシャツを作ったんですね。
松下:手書きで。
佐藤:「これで良いや」って、上はそれを着て行って。それに500円位のデッキシューズを履いて…でもそれは別に(ウケを)狙っていないんですよ、本当に何も知らなかったので。
フジテレビにも時間通りに着いたんですが、どこから入ったら良いか分からないから迷っちゃって、ちょっと遅刻したんです(笑)。
松下:(笑)。
佐藤:それで「すいません」って走って行って、係の人に「こっちです。とにかくこの部屋に入ってください」と言われて(心臓が)バクバクでドアを開けて入ったら、課題曲がウルフルズの「バンザイ」だったんですが、それをめちゃくちゃ上手に歌い上げている方がいらっしゃったんです。他の皆さんもストレッチをしたり声を出したりしていて、それを見た瞬間、本当に失礼ですけど、ちょっと笑ってしまって。“いや、ウルフルズ聴いたことあります? なんでそんな上品に仕上がっちゃっているんだろう”みたいな…そこで緊張の糸みたいなものがボンッって(切れて)、一気にリラックス出来たんです。
松下:そうなんですね。
佐藤:“僕はとにかく楽しんでやろう”ということで。
松下:すごい。
佐藤:でも、ハチャメチャです。今だったら「これをやったら受かりますよ」と言われたとしても絶対に出来ないような…無知の強みですよね。
松下:それはありますよね。その時だからこそ出来ること。
佐藤:その時にすごくありがたかったのは、トータス松本さんもオーディション会場にいらっしゃっていたんですよ。
松下:そうなんですか!
佐藤:宮本亜門さん、脚本の土田英生さん、トータス松本さんが並んでいらっしゃって、「何番から何番の方入ってください」と言われた時に、本当に失礼ですけど、心の中で“うわぁ、トータス!”と思って。
松下:(笑)。
佐藤:もちろん、まずは亜門さんにちゃんと目を合わせて挨拶をして。
松下:総合演出の方ですから。
佐藤:亜門さんに見てもらわなくちゃいけないんですけれども、僕はトータスさんに釘付けで。僕なりに真剣にやっているんですが、トータスさんがそれを面白がってくださって。
松下:そうなんですね。
佐藤:亜門さんも土田さんも“なんじゃこの男は”と思ったらしいんですけど、“でもちょっと気になる…面白いんだけど、流石に(合格にするのは)なぁ”と「不合格」のところに(書類を)置いたのを、トータスさんがコッソリ「合格」の方に移してくださったりとか。
松下:え! それは目の前でされるんですか?
佐藤:後から聞いた話なんですけれども。
すごくありがたかったです。人との出会いというか、人によっては“なんだコイツ、大丈夫か?”みたいに見られてもおかしくないところを、お三方とも面白がってくださって。賭けですよね。経験も全くない人間ですから。
松下:その舞台のオーディションを経験された25年前の佐藤隆太君に、今、どんな言葉をかけますか?
佐藤:どうでしょう……難しいなぁ。「ひとつひとつの出会いに感謝しなさい」ということですよね。
松下:それがスタートですものね。
佐藤:高校までは野球しかやってこなかったですし、幼い頃からこの世界に憧れを持って、ずっと夢としては持ち続けてはいたんですが、とはいえお芝居の勉強や訓練をちゃんとしたことがあるわけでもない。そんな中でこうやって面白がってくださったり可愛がってくださる皆さんがいて、本当に面白い作品に続けて出させていただいているので、皆さんに感謝ということは忘れちゃ駄目だよ、ということですよね。
松下:素敵な言葉をありがとうございます。
佐藤:とんでもないです。
⚫クロニクル・プレイリスト「ガッツだぜ!! / ウルフルズ」
松下:この番組では、今日お話しした“心躍る瞬間”にまつわる思い出深い曲やその時代の印象深い1曲を“音楽の年代記”=「クロニクル・プレイリスト」としてお届けしています。佐藤さん、今日はどんな曲でしょうか?
佐藤:今日はウルフルズさんの「ガッツだぜ!!」を聴きたいなと思います。
松下:今のお話を聞くと、この曲は聴かないといけないですね。
佐藤:そうですね。
松下:さて、25年前の初舞台『BOYS TIME』がデビュー作品ということでお話を伺いましたけれど、俳優として今年は25周年ということで良いのでしょうか?
佐藤:そうですね。
松下:節目の年ですが、25年を振り返ってみていかがですか?
佐藤:ありきたりな言葉だから恥ずかしいですけど、本当に“あっという間だったな”と思いますね。
松下:やはり気持ちのアップダウンもありますし、楽しい瞬間も苦しい瞬間もあるじゃないですか。その中で25年ずっと前を向いて走り続けてこられた秘訣は何だと思いますか?
佐藤:これは別に良いカッコをしたいわけじゃなくて、自分の力だけで走ってきたという感覚は本当にないんです。
特に若い頃は、さっきも言いましたけれど、自分の力というよりも、面白がったり可愛がってくださったりする方がいて、出会いにすごく恵まれていたなと思うんですよね。むしろ恵まれ過ぎていて一時期ちょっと悩んじゃったくらいです。
自分の実力よりも良い役をいただいちゃったりして、その役を演じるに向けてまだ自分が足りていないなという焦りを感じたこともありましたし、でも続けてこられたのは、結局は自分が憧れた世界だし、(お芝居が)好きである、ということですよね。
○
佐藤隆太さん公式サイト
○
佐藤隆太さんInstagram
○
「THE3名様」のドラマの地上波放送・FOD配信
○8月30日公開の映画
「THE3名様Ω~これってフツーに事件じゃね?!~」
<佐藤さん衣装>
トップス:ユーゲン / HEUGN
パンツ:アンフィーロ / UNFILO
スタイリスト:勝見宜人(Koa Hole inc.)
<松下さん衣装>
ワンピース:グローブ / grove 03-6851-4604
イヤリング:テイクアップ / TAKE-UP 03-3462-4771
スタイリスト:大沼こずえ
ヘアメイク:土橋大輔
- ゲストが語る“心躍る瞬間”や“エピソード”
その時に刻まれた思い出の1曲。
または、その時代の印象的な楽曲。