⚫心躍る瞬間「活動再開後のライブでのお客さんの声」
松下:今月は、flumpoolの山村隆太さんをお迎えして“心躍る瞬間”についてお伺いしています。山村さん、どんな瞬間でしょうか。
山村:僕が“心躍った瞬間”は「活動再開後のライブでのお客さんの声」です。
松下:それでは時計の針をその瞬間に戻していきましょう。
flumpoolは、2017年12月より約1年活動を休止されていました。休んでいた時間はどんな風に過ごしていらしたのですか?
山村:休んでいた時は大変でした。僕は声が出なかったので、“音楽を辞めなきゃな”と思う時もあって、“誰かに(自分の代わりに)歌ってもらおうかな”という気持ちもありつつ…。
松下:そこまで考えていらしたんですね。
山村:そうです。“多分、(もう歌うことは)無理だろうな”と思っていたので。“頑張らなきゃな”という方向と、“辞めたらどうしようかな”という方向がお互いに綱引きしている感じでした。
松下:音楽から離れちゃった、という感じですか?
山村:全然やっていませんでしたね。1年近く(休止期間が)あって、そんなに時間があることもないので、普段は観ない海外ドラマを。
松下:一気観?
山村:『ウォーキング・デッド』を1か月で観ました。あれ、めっちゃ時間がかかるんですよ(笑)。1日8時間位観て、3週間位で観終わって。
松下:(笑)。
山村:最初の時期はそういうことをしていました。あとは、声が出ないことによって、逆に伝えられたことも沢山あって。
松下:そうなんですね。
山村:(活動休止前まで)強がって、“声が出ない自分を見せたくない”と、素直になれない自分がいて。声が出ない弱い自分を殻に閉じ込めて、「大丈夫」を口癖にしていたのが、「(声が)出ません」と発表したことで、逆に気持ちが楽になって、殻が破れたというか。
松下:それを公に出来たことによって、ちょっとスッキリした?
山村:そうですね。自分のボーカルとしての役割をどこか過剰に意識していたところがあったのかもしれないですね。“ボーカルという存在は強くなきゃいけない”、“常に前向きでないといけない”、メンバーに対しても、“ボーカルがどうにかしなきゃいけない”、“歌えなきゃいけない”と…その役割が外れた時に“何もなくなってしまったな”と落ち込む半面、なくなっても意外とメンバーはメンバーだし、お客さんはお客さんだったので、自分が背負っていたものは勝手に背負っていただけだったんだな、と。
松下:正直になれたことで、見えていなかったことがクリアに見えてきた感じですか?
山村:そうです。誰もそんなに求めていないというか、自分で格好つけようとして…。
松下:背負い込み過ぎていたんでしょうか。
山村:そうですね。それで、初めて自分の弱さを伝えられたということは、良いことだったなと。このピンチが、逆にチャンスに変わった。
松下:何かを見つけた時間でもあったんですね。
山村:そこからすごく素直になりました。それまではツンケンすることもあったんですが、良い意味で「何でも良いよ」という適当感が。
松下:角がなくなった感じ。
山村:そうです。「みんなに任せるよ」という感じで。「(性格が)柔らかくなった」と言われましたね。
松下:山村さんとしても、flumpoolとしても、何か違ったステージになったというか。
山村:そうですね。僕はかなり前向きになったと思うんですが、実際、みんなも大変だったんですけれども。
松下:そんな時を経て、2019年1月13日に地元大阪・天王寺公園のゲリラライブで再始動。
山村:そうですね。僕たちの原点ですね。声が出るようになって、もう1回ゼロからスタートする気持ちでやらなきゃなという意味で、僕らが初めて路上ライブに出て人前で歌った場所からスタートしていこう、ということで、(大阪・天王寺に)決まりました。
松下:1年お休みされてからステージに上がった瞬間はどうでしたか?
山村:“声が出るかな”という心配はもちろんあったんですが、でも、声が出ないことを気にして殻に閉じこもっていた自分はもういなくて、“声が出なかったらメンバーに頼るか”とか“どうにかなるかな”という信頼があったので、そこまで気負わずにいられました。
今日、“心躍る瞬間”を「(活動再開後のライブでの)お客さんの声」と言いましたけれども、活動を再開して行ったツアーでのことなんですが、僕が声が出なくなって活動休止する前の最後の場所であるパシフィコ横浜でのライブで、最後の方で演奏した『星に願いを』という曲で感極まってしまって…。戻ってこれた喜びと、バンドのメンバーと一緒に演奏出来ている喜びと、お客さんがいてくれる喜びが急にきて、サビが歌えなくて“ダメだ”と思った瞬間に、お客さんの大合唱が始まったんです。
松下:代わりに?
山村:“何、これ!?”と思って。すごい瞬間でした。
松下:それはちょっと涙なしではいられないですね。
山村:そうですね。あの瞬間の声は忘れられないです。
⚫クロニクル・プレイリスト「HELP / flumpool」
松下:この番組では、今日お話しした“心躍る瞬間”にまつわる思い出深い曲やその時代の印象深い1曲を“音楽の年代記”=「クロニクル・プレイリスト」としてお届けしています。さて、今日はどんな曲でしょうか?
山村:今回は、活動再開後に出した第1弾シングルなんですけれども、“自分の弱さや欠点を見せることが出来るのは強さだ”という、活動休止を経て感じたことをそのまま詰め込んだ曲です。
松下:タイトルが「HELP」というのがすごいなと思いました。今までの山村さんだったらこのタイトルを付けないんじゃないかなと。
山村:そうですね。
松下:「助けて」と言えることも勇気が要るし、“弱い自分を認める強さ”という、今までは違うアプローチだなと。
山村:確かに。僕も、1人だったら乗り越えられなかったことだと思うので、“助けを求める力”というものがあるんだということを…そこは間違ってはいけないところだなと思います。
松下:ちなみにflumpoolさんは、TOKYO FMで、この番組の後12:30からレギュラー番組「YOUNG SONIC」を担当されています。
山村:そうなんですよ。
松下:この後ですよね。こちらはどういう番組になるんですか?
山村:「みんなの自分らしい居場所」をコンセプトに、10代、20代のあいだで流行っていることを僕らが知りながら、ちょっと関西色も含め…な、番組です(笑)。
松下:10代、20代のあいだで、今、何が流行っているんですか?
山村:いろんな言葉とかが流行っていますけど、僕が一番気になるのは、「タイパ」。
松下:あ~!
山村:分かります? 「タイムパフォーマンス」という。「コスパ(コストパフォーマンス)」みたいなやつですよね。
松下:コスパ、タイパ…。
山村:タコパ(笑)。
松下:ビジネス用語なのかなと思っていたら、若い子たちが普通に言っているので。
山村:“タイパ重視”ですよね。例えば、時間をかけて作った音楽が、(時間対効果のために)1.5倍速で再生される、映画が1.5倍速(で再生される)。
松下:作り手の気持ちとしては“そのまま観て欲しい、聴いて欲しい”というのはありますけれども、“そういう世の中になってきたんだな”と受け入れなければいけないのかな。
山村:そうですね。曲作りとかも、今の曲はイントロがなかったりするんですよ。若い人たちの主流というか、そういう時代なのかなと思うことが面白いです。
松下:時代の流れと共にいろいろ変わっていくと思いますが、山村さんの中で今、流行っているものはありますか?
山村:僕は姿勢とかにものすごく敏感で。
松下:姿勢って、体のことですか?
山村:そうです。体の姿勢とかを研究するのが流行りです。
松下:どういうことですか? 骨の位置とか?
山村:そうです。パソコンとかをする時に猫背になるのが嫌で、スタンディングデスクを買ったり、姿勢が良くなる椅子を買ったり。最近はスタンディングデスクの下にランニングマシンを置いて、歩きながらパソコンが出来る、みたいな。
松下:どちらかにしたら良いのに(笑)。
山村:タイムパフォーマンスが大事なんです(笑)。仕事をしながら走れるという。タイパも良いし、姿勢も良くなるし。
松下:全部込みで。
山村:そうですね。そんなことを考えるのが最近の流行りですね。
松下:“いかにタイパを良くするか”にもハマっていらっしゃるんですね。
山村:そこもありますね。
松下:話は変わりますが、15周年を迎えられたflumpoolさんは、今後どんなものを皆さんに届けていきたいという想いがありますか?
山村:「ありのままで」と松下さんもおっしゃっていましたけれども、音楽って、言葉や表情では見せられない想い、自分も知らないような素の部分を伝えてくれると思うんです。だから、自分も失敗を恐れず、目の前の人に出来るだけ素直な音楽を届けていくことで、受け取ってくれる人が日常生活の中で素の自分を見つけるきっかけになると良いなと思っているので、(そういう想いで)これからも音楽を作っていけたらと思っています。
松下:楽しみにしています。
○6月7日公開の映画
『風の奏の君へ』
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flumpool 15th Anniversary tour 2024「This is flumpool !!!! 〜15の夜に逢いましょう〜」
○flumpool レギュラーラジオ番組
「YOUNG SONIC」
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flumpool オフィシャルサイト
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flumpool 山村隆太さん Instagram
<松下さん衣装>
レースカーディガン、スカート:ランバン コレクション / LANVIN COLLECTION 0120-370-877
イヤリング:スタージュエリー / STAR JEWELRY 03-5537-8088
スタイリスト:大沼こずえ
ヘアメイク:山科美佳
- ゲストが語る“心躍る瞬間”や“エピソード”
その時に刻まれた思い出の1曲。
または、その時代の印象的な楽曲。