⚫心躍る瞬間「友人とのアメリカ車旅」
松下:今月は、俳優の青木崇高さんをお迎えして、“心躍る瞬間”についてお伺いしています。先週は「新しいことに挑戦する時」でしたが、今週はどんな瞬間でしょうか?
青木:はい。「友人とのアメリカ車旅」です。
松下:先週は1人旅のお話を聞かせていただきましたが、今回はご友人と車での旅ということで、それでは時計の針をその瞬間に戻していきましょう。
2人旅へ行かれたのは、いつ頃のお話ですか?
青木:2019年の9月頃でしたね。僕は1人で旅に行くのが好きだったんですが、アメリカのルート66とか、映画でもよくある荒野へ車で行きたい、というのが、人生の夢というか、やりたいことリストにあったんです。
それで、“このタイミングで行けそうだ”という時に、“友人の映画監督がL.A.にいたな”と思って、ダメ元で連絡したんですよ。「どうですか?」と言ったら「お久しぶりです。行けます」と。元々その人も旅好きな人だったんですが、「じゃあ行きましょう」となって、日程とかもバババッと決めて。
松下:決断が早いですね。行動力がすごい。
青木:“これは順風満帆だろうな”と思ったら、いきなり飛行機に乗り遅れたり、いろいろトラブルで大変だったんですけど。
松下:ちなみに、乗り遅れたのは?
青木:はい、私です(笑)。
松下:(笑)。そんなこともありながら、アメリカに行ったんですね。
青木:そうです。初めにセドナへ行って、その後にグランドキャニオンへ。
松下:行動力があれば…私も旅が好きなので、今すぐ行きたい位なんです。
青木さんは2人旅とはいえ、(海外で)車って、結構勇気が要りますよね?
青木:なかなかね。
松下:どんな車で行ったんですか?
青木:普通の、ちょっと大きめのやつで。
松下:バンみたいな感じの?
青木:そうです。
松下:それでずっとルート66を走って行くんですか?
青木:帰りにルート66を通ったけれど、行きは別の道でひたすら…ずっとひたすら真っ直ぐ、みたいな。
そんなに(景色は)変わり映えは無いけれど、ちょっとずつ変わっていく。陽もちょっとずつ傾いていって、明るい夕景からだんだん濃くなっていく。“こんな贅沢(な景色)は、こういう場所でしか見られないだろうな”って。
松下:いいなぁ。日本でも見られるけれど、海外の夕景って、(それぞれの場所で)全部違いますよね。
青木:違うね。空気が違うのか、あと、受け止める心もね。
松下:“ここまで来たんだぞ”という気持ちで見る景色は、やっぱり特別ですよね。
やはり、1人旅と2人旅とでは違いますか?
青木:彼と「10年後も同じところを旅したいね」という話をして。
松下:素敵! フィーリングが合うんでしょうね。
青木:すごく合った! それまで映画祭とかで会ってお酒を飲むくらいで、たまに会うという感じだったんだけれども、何かちょうど、人生においていろいろ考えていることが一緒だったりして。彼もちょうど“グランドキャニオンを見たい”と思っていた時だったみたいで。
グランドキャニオンで、ヘリコプターで谷底を見る、という(アクティビティ)があるんですけど、全細胞が瞬間的に入れ替わったみたいな…本当にすごい瞬間でした。
⚫クロニクル・プレイリスト「Everybody's Talkin'/ Harry Nilsson」
松下:この番組では、今日お話しした“心躍る瞬間”にまつわる思い出深い曲やその時代の印象深い1曲を“音楽の年代記”=「クロニクル・プレイリスト」としてお届けしています。青木さん、曲紹介をお願いします。
青木:ハリー・ニルソンで「Everybody's Talkin'」です。
松下:なぜこの曲を選んでくださったんでしょうか。
青木:これは『真夜中のカーボーイ』という映画の主題歌でもあるんですが、元々、この曲がすごく好きで。車で旅をしている間に、この曲が流れてくると…。
松下:絶対に合います!
青木:ね!
松下:映画の雰囲気も、今回の旅に近いところもありますし。
青木:乾いた空気の…。
松下:ちょっと砂ぼこりもありつつ。
青木:そこでこの曲が流れると、気持ちが良いんですよ。
松下:2人旅の最中も、この曲が?
青木:頭(の中)で流れていましたね。
松下:その「頭(の中)で流れる」って、重要なんですよね。
青木:そうそう!
松下:自分だけのテーマソングみたいな感じで良いですよね。
●スマートフォンで撮影 自ら手がけたロードムービー風ドキュメンタリー
松下:さて、青木さんが旅好きなのはよく分かりました。スマートフォンで撮影した旅の動画をご自身で編集されて、それを短編のドキュメンタリーとして発表されていますよね。1つが、先ほど伺ったアメリカ2人旅を作品にした「青木崇高のアメリカ西部までちょっと会いに」。
“ちょっと会いに”というか、壮大なドキュメンタリーになったんじゃないですか?
青木:そうですね。そのひとつ前に、最初に僕が映像を作るきっかけになったのが、ウズベキスタンに行った時だったんですよ。
松下:そうなんです。もうひとつが「あおきむねたかの『ウズベキスタン』までちょっと会いに。」。これはどういうきっかけだったんですか?
青木:これは2018年だったと思うんですが、俳優の加瀬亮さんに「ご飯でもどうですか」と連絡を取ったんです。そうしたら「ウズベキスタンで撮影するので、帰って来てからの方が良いかな」と言われて、「ウズベキスタンですか。良いなぁ」となって、「おいでよ」みたいな感じで。
松下:そんなきっかけだったんですか!?
青木:そうそう。「じゃあ、行きます」と言って、それで本当に行ったんですよ。
松下:「ちょっと会いに」というのは、そこから来ているんですね。
青木:そうなんです。ここから始まったんです。
自分にもちょっと言い聞かせているタイトルでもあって、「“友人に気軽に会いに行く”ということで良いじゃない」というか…。もちろん準備や手続きは大変だけれども、あくまで“会いに行く”というシンプルな気持ちが行動原理になる、というような。
松下:面白い。
青木:本当にぷらっと会いに行って。加瀬さん自身は、映画の撮影で行かれているんですよ。
松下:そうですよね。
青木:僕は全然(映画の)出演者でもなんでもないけれど、お土産を沢山持って行って、そこから他の街に旅をして、最後に(加瀬さんと)合流してご飯を食べてバイバイ、みたいな。
松下:じゃあ、陣中見舞いへ行ったような感じ。
青木:付け届け…差し入れをしに行った感じ。
松下:差し入れを届けに行った位の感じでウズベキスタンを楽しもう、と?
青木:そうです。「ウズベキスタンまでちょっと差し入れに」でも良いんです。
行く途中で、スマホで(動画を)バーッと撮っていて、帰ってきた時に、“せっかくだから映像を編集してみよう”とカチャカチャやっていて。(加瀬さんが出演していた映画が)黒沢清監督の映画(『旅のおわり世界のはじまり』)だったんですが、そのプロデューサーにシャレで「ちょっと作った映像があるんですけど、何かのプロモーションで使えませんかね」と言ったら「面白いですね」となって、その映画が公開されたんです。新宿のテアトルで、ある日、夜の上映が終わった後、僕がスマホで撮った30分位の…。
松下:30分を映像にするって大変ですよね。
青木:かなり大変だった。映像の編集というのも初めてだったから、誰からも教わることなく(1人で)カチャカチャやって。
松下:どうやって習得されたんですか?
青木:ちょっとずつ、“こうじゃないかな、こうじゃないかな”で。
松下:すごい!
青木:それで味をしめちゃって、という感じですね。
松下:それで第2弾も。
青木:それが、アメリカ(「青木崇高のアメリカ西部までちょっと会いに」)。
松下:俳優としてカメラの前に立っているわけじゃないですか。スマートフォンで撮ったものを繋いでいくと、ストーリーやカット割りを(自分で)考えたり…ということが自然にあると思うんですけれども、俳優として、その辺りはどうですか?
青木:返ってくるものは大きくて。演じる時にアングルとかを意識するし、よりカメラとかサイズとか、編集のポイント…あまり編集とかを考え過ぎると、監督の作品なのに、ということになるけれど。
松下:そうですね。
青木:だけど、“このシーンにおいてどういうテーマで”ということとかは考えるようになったし、技術さんのことをすごく意識するようになったかな。
松下:ウズベキスタンで撮っている時は、こんなことになるとは思っていなかったんじゃ無いですか?
青木:思っていなかった。
松下:“思い出で残せたら”くらいの感じだったわけですよね。
青木:そうそう。だから最初はずっと縦(画面)で撮っていた。で、パソコンに落とした時に“うわ、やべぇ!”となって(笑)。
“さあ、どうしよう”となって、絵や情報を挟んだり、吹き出しを入れたり、いろいろ工夫して。そういうのも、それはそれで味になったのかなと。
松下:面白いですよね。思ってもみなかったことが作品として生まれるわけですものね。
青木:やってみるもんだなと思いました。
松下:この「あおきむねたかの『ウズベキスタン』までちょっと会いに。」は、どこで観られますか?
青木:YouTubeで。
松下:このお話を踏まえた上で、皆さんにもご覧になっていただきたいなと思います。
青木:「青木崇高のアメリカ西部までちょっと会いに」の方は、映画祭とかで流していただいたりしていて、その時は観れます。
松下:なるほど。じゃあ、オンライン上ではなかなか難しい?
青木:そうですね。オンライン上ではウズベキスタンの方になるんですけれども。
松下:私としては、音楽とかも楽しみです。
青木:音楽も入っていますよ。
松下:入っていますよね。ぜひご覧ください!
青木:よろしくお願いします。
<松下さん衣装>
ブラウス、スカート:PINKY & DIANNE / ピンキー&ダイアン 03-5785-6424
イヤリング:VENDOME AOYAMA / ヴァンドーム青山 03-3409-2355
スタイリスト:大沼こずえ
ヘアメイク:山科美佳
ゲストが語る“心躍る瞬間”や“エピソード” その時に刻まれた思い出の1曲。 または、その時代の印象的な楽曲。
『Everybody's Talkin'』 Harry Nilsson