⚫心躍る瞬間「J-POPに初めてときめいた時」
松下:今月お迎えするゲストは、いきものがかりの吉岡聖恵さんです。お久しぶりです。
吉岡:お久しぶりです。
松下:よろしくお願いいたします。何度かお会いしたことはありますけれども、ちゃんとお話をさせていただくのは、実はこのラジオが初めてでしょうか。
吉岡:そうなんですよ。
松下:今日はいろいろ、根掘り葉掘り聞かせていただいても良いですか?
吉岡:機会を作っていただいてありがとうございます。いろいろご縁があるので、今回もすごく嬉しいです。
松下:私としては、映画『砂時計』(2008年)の主題歌「帰りたくなったよ」にはじまり、何と言っても大事な1曲がありまして。NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(2010年)の主題歌である「ありがとう」という名曲を歌っていただいています。
吉岡:恐縮です。
松下:あの時はお世話になりました。
吉岡:こちらこそお世話になりました。いきものがかりを全国の方に知っていただくきっかけとなった曲がこの「ありがとう」なので、良い機会をありがとうございます。
松下:私も、撮影中は何度も(聴いて)心の支えになりました。今も大事に聴いております。
さて、これから4週に渡って吉岡さんの“心躍る瞬間”を伺っていきます。それは一体どんな時でしょうか?
吉岡:私が“心躍った瞬間”は「J-POPに初めてときめいた時」です。
松下:それでは、時計の針をその瞬間に戻していきましょう。
まさに吉岡さんは、J-POPのど真ん中にいらっしゃいますよね。
吉岡:ありがとうございます。
松下:その吉岡さんが、J-POPのどのような時にときめいたのでしょうか?
吉岡:私自身は大家族の中で育ったんですが、母もそうなんですけれど、ずっと、曾祖母や祖母に童謡を教え込まれていたんです。雨が降ったら雨の歌、赤い靴を買ったら「“赤い靴 はいてた~”って歌ってみな」という感じで。
朝ドラ(NHK連続テレビ小説)繋がりになってしまうんですけど、家族で観ていた『ひらり』(1992年)という作品があって。
松下:ありましたね!
吉岡:うちの家族はずっと朝ドラを観ていたので、初めてJ-POPに触れたのが、『ひらり』の主題歌の「晴れたらいいね」という、DREAMS COME TRUEさんの曲だったんです。
童謡の場合は、自分が知っている世界を思い描きながら、“赤い靴だな”とか、“カラスの歌だな”とか、分かる範囲で見えているものを歌う、という感じなんですが、J-POPでは(童謡と違って)、知らない大人の世界だったり、“これってどういう意味なんだろう?”と思うような難しい言葉を、自分の知らないバンドサウンドに乗せてと歌う、という感じだったので、それが初めての経験で、(「晴れたらいいね」は)“この世界もすごく楽しい。好きだな”と思わせてくれました。
松下:では、歌詞に注目して聴いていらしたんですか?
吉岡:もしかすると、そうかもしれないです。
松下:童謡と(J-POP)の違いは、そこが大きいですよね。
メロディに乗るとすんなり心には入ってくるけれど、いざ歌詞カードを見てみると、すごく難しいことを歌に乗せていたり、想像力を掻き立てられますよね。
吉岡:そうなんです。子供ながらに、“これは大人のことを表現しているな”と思うような感じもあって、すごく興味を惹かれていました。
松下:当時小学生の吉岡さんからすると、“ちょっと背伸びした世界”みたいな、憧れのようなものがあったのかもしれませんね。
吉岡:まさに、ですね。“大人ってこうなのかな?”とか、“恋愛は難しいもので、何かを犠牲にして(恋を)しているのかな?”とか。何にも分からなくて混乱しているけれど、メロディはキャッチーじゃないですか。
松下:そうですね。
吉岡:なので、ずっと歌詞の意味を想像していました。
松下:では、当時からいろんなJ-POPを聴いていらしたんですね。
吉岡:そうですね。興味を持ち始めて、カラオケにどんどんハマっていきましたね。
松下:(カラオケは)流行っていましたしね。
吉岡:ちょうど、世代的に流行っていました。
⚫クロニクル・プレイリスト「晴れたらいいね / DREAMS COME TRUE」
松下:この番組では、今日お話しした“心躍る瞬間”にまつわる思い出深い曲やその時代の印象深い1曲を“音楽の年代記”=「クロニクル・プレイリスト」としてお届けしています。吉岡さん、それでは曲紹介をお願いいたします。
吉岡:先程もお話に上がりました、DREAMS COME TRUEさんの「晴れたらいいね」なんですが、童謡少女が初めてJ-POPに触れて感激して、“自分もこういう曲を歌ってみたいな”と思った曲です。
⚫“肯定”がテーマ…オリジナルアルバム「〇」
松下:ここからは、昨年12月13日にリリースされました、いきものがかり2人体制初となります、オリジナルアルバム「〇」(まる)について伺っていきたいと思います。
かなりインパクトのあるタイトルで、ジャケットも可愛いですね。
吉岡:ありがとうございます。
松下:綺麗なまん丸というより、ちょっと手書き感があるような感じがほっこりして良いなと思いました。
このアルバムの想いとシンクロしている部分があるんでしょうか?
吉岡:アルバムの中で最初に録った曲が「ときめき」という曲なんですけれど、この曲は、自分自身のことを肯定する、“私が私で幸せになることを決める”“私が私で私を信じる”というような、自分自身に対してすごく強いメッセージや決意を込めた曲で、“肯定”ということをテーマに、リーダーが書いてくれたんです。
そこから、他の曲も、“自分のことを肯定する、自分を認めるって良いよね”という(メッセージが込められた)曲が増えていったので、(アルバム全体に)“肯定”というイメージが広がったんです。
それで、アルバムのタイトルを決める会議で、リーダー(水野良樹さん)がホワイトボードに大きく「○」と書いて、「肯定」というテーマから「○」というタイトルが導き出されて。「これは良いね、インパクトもあるし、肯定という意味が優しく伝わるね」ということで決まりました。
松下:「肯定」というタイトルより、「○」の方が “どういう世界なんだろう”と想像が膨らみますね。先程のDREAMS COME TRUEさんの話のように、聴く側の方たちが曲のストーリーを想像するじゃないですか。そういう意味では、ギフトボックスのようなアルバムですよね。
吉岡:嬉しい。ありがとうございます。
松下:新体制になられて、そしてお2人とも父親、母親になられて、環境の変化もあったと思いますが、楽曲やアルバム制作で“今までと違うな”と感じられたことはありましたか?
吉岡:環境の変化というより、“このアルバムの中で新しいことに挑戦してみよう”というところが少しずつ盛り込まれていまして。
リーダーが、曲を作っていく過程で、“自分のソロ活動で出会った方々のアレンジと吉岡の歌を結びつけたらどうか”と想像を膨らませたうえで曲を書いていったり…。
松下:なるほど。
吉岡:表に出る作品としては初めて、リーダーがディレクションをして私の歌を録ってくれたんです。
松下:(リーダーの)水野さんのディレクションはどのような感じですか?
吉岡:“ちゃんとリスペクトを持ってやってくれているな”というところが有り難いです。
松下:安心感がありますよね。「いきものがかり」として約25年ずっと活動されてきたので、お2人だけのやり取りには誰も入れないのではないかなと。
お2人だからこそ言えること、注文出来ることがあったりしますか?
吉岡:私が高校1年、リーダーが高校2年の時から、約25年間ずっと私の歌声を知り尽くした中で(意見を)言ってくれるので、そこが他には無いところですね。
あとは、私自身も、(曲を)作った本人に「ここはちょっと強めでいこうか」と言われると、“こういう歌なんだ”という納得があって。それでより理解が深まって、良い曲、良い歌になっているのかなと思います。
松下:(アルバム「○」)には、より「いきものがかり」を凝縮したものが感じられる曲が沢山詰まっているということですね。
吉岡:その通りです。
<吉岡さん衣装>
シャツワンピース、ジレ、スカート:RE SYU RYU / リシュリュ 089-927-2288
ネックレス: temtem / テムテム
イヤリング:in or U / インオアユー
共に、03-6427-3260
スタイリスト:沓澤りさ
<松下さん衣装>
ブラウス:Couture Brooch / クチュール ブローチ 03-6851-4604
イヤリング:TAKE-UP / テイクアップ 03-3462-4771
スタイリスト:大沼こずえ
ヘアメイク:山科美佳
ゲストが語る“心躍る瞬間”や“エピソード” その時に刻まれた思い出の1曲。 または、その時代の印象的な楽曲。
『晴れたらいいね』 DREAMS COME TRUE