⚫心躍る瞬間「小学生の時に観たミュージカル『ふたりのロッテ』」
松下:今月お迎えしているゲストは、俳優の古田新太さんです。よろしくお願いいたします。
先週は古田さんの小学校時代のお話をいろいろ伺いました。今週も古田さんの“心躍る瞬間”について伺っていきます。2週目の今日、お話いただくのはどんな瞬間でしょうか?
古田:おいらが“心躍った瞬間”は「小学生の時に観たミュージカル『ふたりのロッテ』」です。
松下:それでは時計の針をその瞬間にしていきましょう。
小学生の時にキッスを観て、そしてミュージカルを観劇されているんですね。
古田:学校の芸術鑑賞会みたいなものに行かされて、全く興味がなくて、オープニングの幕が開いてからすぐに寝ちゃって。
松下:(笑)。
古田:だから、「『ふたりのロッテ』です」とか言ってるけれど、ストーリーを全然覚えちゃいないのね。
松下:(笑)。
古田:けど、目を覚ましたら市場のシーンで、八百屋さんとか魚屋さんとか牧師さんが出ていて、その人たちが急に歌って踊りだしたの。“うわ、これはなんてバカバカしい世界だ”と思って。“そんな市場は行ったことねえ!”みたいな。
松下:起きた瞬間に、見たことがない、リアリティとはかけ離れた世界を観たんですね。
古田:“これは面白い、何をやってもアリなんだ”と。その頃はまだ、“漫画家になりたい”とか、“プロレスラーになりたい”とか、キッスを観ていたから“ロックミュージシャンになりたい”とか思っていたんだけど、そのミュージカルの舞台を観たら、“何になってもいいんだ”と。
松下:ステージ上であればミュージシャンにもなれるし、プロレスラーにもなれるし。
古田:漫画家にもなれるし。
松下:自分の好きなものが全てそこで叶えられる。
古田:そして、“歌って踊っていいんだ、こんなお得な商売はないな”と。
松下:それが俳優という職業へ繋がったんですか?
古田:そうなんです。“こんなにでたらめに出来る職業があるんだ”って。
松下:ある意味自由ですもんね。
古田:それで“ミュージカル俳優っていいぞ”と思って、そこからなりたいなと(思うようになった)。
松下:古田少年はそこから具体的に動き出したんですか?
古田:楽器はやっていたし、歌も好きだったけど、小学生だからなかなか叶わないから、中学生になって演劇部に入ろうと思ったんだけれど、演劇部がなくて。
松下:あら。
古田:それで中学生の時に無理やり先生に頼んで、「体育館を午後1回貸してもらえませんか」と言って、ミュージカルをやったんです。
松下:ええ! それは脚本も書いて?
古田:脚本は有りもので。「太った殿様」という。
松下:それは絵本ですよね?
古田:そうそう。それでおいらは太った殿様。
松下:(笑)。
古田:お客さんを呼びたかったから、各運動部のキャプテン、いわゆるモテるやつらに「お前ら、ミュージカルやるぜ」と声をかけて。そして1人の先生を仲間に引き込んで、木戸銭で100円取ってやったら、結構いっぱい集まった。
松下:すごい! その時から頭の中にいろんな構想が生まれていたんですね。
古田:くだらないギャグとか入れて。
松下:脚本は有りのものだったけれど、オリジナリティを入れて?
古田:「太った殿様」は民話劇なんだけど、おいら(殿様)は志村さんのバカ殿のメイクをしていたからね。
松下:(笑)。ある意味キッスじゃないですか、白塗りで。今の古田さんに通じるものがもうありますね。
古田:中学の時からそんな感じだったけど、高校では演劇部に入って、クラシックバレエとタップをやり始めて、それとは別に、ストリートでブレイクダンスとか流行っていたから、ウィンドミルとかバックスピンとかやっていたの。
松下:すごい! 出来ないことがないんじゃないですか? ひと通り全部のことを…。
古田:いやいや。(ひと通り)やっておいた方が得だなという考え方だったので。準備するより、監督に「これ出来る?」と言われたら「出来ます」と言える方が(得)。
松下:古田さんは、(若い)役者さんに「ダンスはやっておいた方がいい」みたいなことをよくおっしゃっていますよね。そういうことなんですね。“いつでも対応出来るように準備する”という。
古田:監督によっては、日本刀を使って立ち回りしているのに、急に「古田さん、ヌンチャク出来る?」とか言われたりするので、そうしたら「はい」と。
松下:古田さんが「ノー」と言っている姿を見たことがないです。
古田:早く帰りたいんだよ(笑)。
松下:(笑)。それが理由だとしても、人間、出来ないことって絶対にあるじゃないですか。でも、古田さんの場合はないんですよ。すごいなぁ。
⚫クロニクル・プレイリスト「タイムワープ / ロッキー・ホラー・ショー」
松下:この番組では、ゲストの方の“心躍る瞬間”にまつわる思い出深い曲やその時代の印象深い1曲を“音楽の年代記”=「クロニクル・プレイリスト」としてお届けしています。さあ、今日はどんな曲でしょうか?
古田:中学生になって観た「ロッキー・ホラー・ショー」という作品があるんですけれども、ロックとミュージカルがここで繋がるわけです。
松下:これはもう、全て繋がりました。キッスが好きで、ロックが好きで、ミュージカルが好き、となると、この曲は外せないですね。
古田:初めて観たのは「ピクチャー・ショー」という映画の方だったんですけど、“ミュージカルも下品なことを言っていいんだ”って(笑)。
“じゃあ、「ロッキー・ホラー・ショー」みたいなことをやりたい”となっちゃったんです。
松下:実際にやってらっしゃるじゃないですか。マッドサイエンティストの…。
古田:フランク・フルター。
松下:名前が“フルター”ですから。
古田:3回やっていますから。
松下:じゃあ、やりたいことを叶えられた瞬間ですね。
古田:ところがですよ、奈緒ちゃん。
松下:(笑)。
古田:「ロッキー・ホラー・ショー」にものすごくショックを受けてミュージカルをやり始めて、劇団に入った。それは、“日本人がやって恥ずかしくない下品なロックミュージカルがやりたい”という気持ちだったのね。だから、最初にショックを受けた「ロッキー・ホラー・ショー」のフランク・フルターをやっちゃったら、それは本末転倒なんです。
松下:なるほど。
古田:“これがやりたい”じゃなくて、“このようなことがやりたい”だったの。日本人がやって恥ずかしくない、時代劇なんだけど、ロックを使って下ネタもある、というものをやりたいと思って劇団☆新感線にいる。だけど、「ロッキー・ホラー・ショー」って、全部の長さ(上演時間)が1時間40分なんです。でも、うち(劇団☆新感線)がやると3時間20分になるの(笑)。
松下:劇団☆新感線さんの舞台って長いですよね(笑)。観る方も体力が必要ですし。
古田:そうなんです。(観る方も)覚悟がいる。
松下:劇団☆新感線にいらっしゃって、“ようなもの”は、どのくらい叶っていますか?
古田:難しいところなんだよ。おいら、「ロッキー・ホラー・ショー」をやっちゃったじゃない。(上演時間が)1時間40分なのに、観ているとお腹いっぱいになるんだよね。
なんで(劇団☆新感線は)3時間20分もするんだよ!」って(笑)。
松下:(笑)。
古田:「量でお腹いっぱいにするんじゃなくて、質でお腹いっぱいにしようよ」って。
松下:じゃあ、まだまだ(劇団☆新感線で)やりたいことが湧いてくるばかりですね。
古田:そうなんです。
松下:劇団☆新感線は、今年45周年です。それを考えると、古田さんはかなり初期からいらっしゃるんですよね。
古田:劇団に入って41年になります。
松下:いろんなドラマや映画もある中で、劇団☆新感線の作品に毎年出演されていますよね。(劇団☆新感線は)“戻れる場所”という感覚ですか?
古田:やっぱり、ヘビーメタルとかハードロックを使って音楽劇をやっているチームって、そんなにないから。
松下:そうですね。
古田:バンドもいるし、生演奏で歌ったり踊ったり、ダンサーとかアクションをやっている連中は劇団員じゃないけれど、ある程度一緒にやってきて共通言語がハッキリしているから、一から作らなくていいじゃない。
松下:肌感覚が似ているんですね。
古田:「この前やったアレでいこうぜ」みたいなことが出来るから、ラクといえばラク。
松下:言わなくても通じ合える。
古田:作曲家も作詞家もずっとやってくれている人達だから。
松下:安心の場所ですね。劇団☆新感線の舞台もありますけれども、本日1月11日、古田さんご出演のドラマもありますよね。
古田:昨年、川栄李奈ちゃんが主役で「となりのナースエイド」(日本テレビ系)という連続ドラマをやっていたんですけれども、そのスペシャルドラマ「となりのナースエイドSP 2025」が、今日(1月11日)の夜9時からオンエアになります。
松下:ぜひご覧ください。
<松下さん衣装>
ブラウス:アテニア / Attenir 0120-165-333
ワンピース:グローブ / grove 03-6851-4604
イヤリング:エテ / ete 0120-10-6616
スタイリスト:大沼こずえ
ヘアメイク:山科美佳
- ゲストが語る“心躍る瞬間”や“エピソード”
その時に刻まれた思い出の1曲。
または、その時代の印象的な楽曲。