2021年のバレンタイン・デーに開催される
TOKYO FM開局50周年記念 村上春樹 Presents
「MURAKAMI JAM~いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova~」
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- 作家・村上春樹が中心となって届けられる音楽イベントは、
コロナ禍によって苦境に立たされる社会の中で、ミュージシャンにとっても音楽ファンにとっても
生の演奏が楽しめる貴重な機会となる。
- 再び緊急事態宣言が発令された日本において、芸術が果たすべき役割とは一体なにか?
そしてコロナ禍を乗り越えた社会で音楽はどうあるべきか?
MURAKAMKI JAMで音楽監督を務めるジャズピアニスト・大西順子と
日本におけるボサノバ音楽の第一人者・小野リサに、歌手の坂本美雨がその思いを聞いた。
【スペシャルインタビュー 】
大西順子 × 小野リサ × 坂本美雨
- 坂本:村上JAM、今回で2回目になります。今回も大西さんが、音楽監督をというリクエストが春樹さんからあったんですよね?
- 大西:はい。とはいえ、「ボサノバで」って言われて、私はボサノバのエキスパートではないので、そうなると頼みは小野リサさんということで。
- 小野:大西さんとはジャズフェスティバルなどですれ違うことはありましたけど、共演するのは初めてなので、すごくドキドキしています。
- 坂本:音楽ファンにとっても大西さんと小野さんの共演は非常に楽しみですね。
今回は「いけないボサノバ」というテーマがついています。アントニオ・カルロス・ジョビンの曲がメインに選曲されていますけど、大西さんはアントニオ・カルロス・ジョビンの音楽にこれまで親しんで来られましたか?
- 大西:ある時期からジャズの中にボサノバっていうのは必須のマテリアルになっているんですね。私たちの場合は、何をもってボサノバかというとリズム、この曲はボサノバでいこうとか、そういうふうにやるのが主流なんですね。いろんなジャズのスタンダード曲がある中で、ジョビンの曲はジャズのスタンダードにもなっているので、いろんなセッションを始めたときに、知らず知らずのうちにジョビンの曲に触れていたという感じですかね。でも、今回は私もリサちゃんからいろいろ勉強したいと思っています。
- 小野:ジャズとボサノバって親戚のようなものですけど、やはり駆け引きというか、思いやりというか、優しさの感覚というか、そういうのを感じて演奏できたらと思っています。
- 坂本:そうなんですよね。演奏そのものがかっこいいとか、テクニックがすごい、っていうのもありますけど、あの人のフレーズにこう答えたのか、とか音のコミュニケーションが喜びで、私たちもそれを見ていて感動することがよくあるので、今回の村上JAMも愛の溢れた空間になるんじゃないかと期待しております。
- 坂本:今回のMURAKAMI JAMはセールスフォースが協賛してくださっています。セールスフォースが大事にしている言葉として「トレイルブレイザー」というのがあるんですけども、
「トレイルブレイザー」とはビジネスと社会貢献を両立しようという考え方なんですけども音楽においてどんなことが可能だと思いますか?
- 小野:私たち音楽家はやっぱり演奏することで、それをみなさんの毎日の生活の中に「Give」する。「Give and Take」じゃなくてgive and giveできればと思います。
- 大西:そうですね。「Give and Give」ですね。音楽そのものを考えると、やはりどれだけ人を慰められるか、与えるものでしかないんですよね。一方的にこっちは発信するわけですか。それを受けとめる側が、少しでも癒されればそれで本当はそれで成立してしまうわけですよね。もちろんすべての人ではないですけど、聞いている人が、一人でも多く慰められたと癒されたと。それが音楽の形状が激しいものであろうが、ゆったりしたものであろうが、悲しげなものであろうが、どんな種類であってもなにかしら、心に届いて、その瞬間なにか心に響いた瞬間がちょっとでも私たちの音で作ることができたら、結局本望なんですよね。そういう意味では「Give and Give」ですね。
- 坂本:社会貢献でいうと硬いイメージがありますけど、社会を作っているのは、人間ひとりひとりで、結局は隣人のことを考える、自分の周りの人をどう大事にできるかだなって思うので、きっとそこで音楽が、本当に力となると信じてます。
- 大西:そうですね。音楽を聞くことでお腹がいっぱいになったりするわけではないですけど、でもやっぱりないと寂しいですよね。絶対ね。
- 坂本:去年の秋ぐらいからちょっとずつライブ活動とかも社会的に、日本全体で復活してきましたけど、演奏はされてましたか?
- 大西:少しずつですね。そういうライブハウスで、お客様を人数制限しながら、ちょっとずつやってますね。
- 坂本:そんな中で、やっぱりご自身もそうだしお客さんもこれを求めていたな、など大事さを再発見するようなことってありましたか?
- 小野:そうですね、長い間、演奏していなかった分、ステージに立ったときの喜び、あとは感謝の気持ちと、そんな嬉しく幸せな気分になりました。演奏を聞いてくださる方が微笑んでくださったりしたときに、ああ良かったなってすごく感じました。
- 大西:そうですね、みなさんマスクして、本来なら歓声をあげるところを一生懸命、拍手だけで。常連さんの中にはプレートにBravoって書いてくださる方とかいらっしゃって。今の状況だと、その場に来ていただけるだけでも、けっこうなチャレンジじゃないですか。でも来てくださるお客さんがいるので、音楽という形をとっていますけど、人と人のつながりっていうことなんだなって思いますね。
- 坂本:コロナ以降、多くの企業が在宅勤務になったりとか、オンラインでのやりとりというのが増えましたよね。お二人のお仕事やコミュニケーションにも変化はありましたか?
- 小野:そうですね。自宅で演奏して、youtubeの動画を作ったりはしているんで、家でレコーディングというか録画したりということを、自分でも少しずつ始めています。
- 大西:私はそういうデジタルの方にはノータッチで生きてきたので、大変困ったなと思っているんですけど。いろんなライブハウスがお客さんを入れないで配信するようになって、私もライブをやって、それを配信しているんですけど、それがお客様にどのように受け止められているのか。この先、ライブなくてもいいよねって感じなのか、やっぱりそうじゃないのか、その辺の手応えはまだ分かってない感じですね。
- 坂本:この村上ジャムもお客様が少しだけいらっしゃって、あとは配信でご覧になられる方が多いとは思います。演奏されるとき、ネットの向こうにいらっしゃる方のことを想像しながら演奏されていますか?
- 小野:私も弾き始めたら、やっぱり自分の音に集中してしまいます。
- 坂本:昨年は、本当に想定外の誰も予測できなかったことが起こりましたけど、この困難を球規模で乗り越えたあとの社会というのは、どうなると思われますか?
- 坂本:でもきっと音楽、生演奏というのは絶対に必要なものとして残るんじゃないかと思うんですが。
- 小野:今は孤独ですごく距離感を持たないといけない分、人と人がもう少し近い距離に感じられるような、音楽にしていけたらなって、今ふと思いました。
- 大西:さらに音楽に力をつけたい。すごく具体的には言えないんですけど、究極、音楽にどうあって欲しいかと考えると。今はまだ、そういうこと考える時ではないですがコロナが終わった後に、そうなったらいいなって思います。