ファッションデザイナー、起業家、インフルエンサーなどマルチに活躍するハヤカワ五味がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「マスメディアン 妄想の泉」。この番組では、さまざまなフィールドで活躍する起業家やクリエイター、アーティストをゲストに迎え、未来を面白くするヒントを“妄想しながら”探っていきます。4月4日(土)の放送は、株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長の秋元里奈さんが登場しました。
(左から)秋元里奈さん、ハヤカワ五味
◆農家が抱えている課題とは?
秋元さんが代表をつとめるビビッドガーデンでは、“ITの力を使って農業に貢献すること”をモットーに、全国の農家から直接食材を取り寄せることができるオンライン直売所「食べチョク」のサービスなどを運営しています。
ハヤカワが「食べチョク」ならではの特徴を尋ねると、「野菜セットの販売に力を入れている」と秋元さん。産直サービスのなかには、届く食材の内容がわからないものもあるそうで、「嫌いな野菜が届いたら嫌ですから、うちでは『食べチョク コンシェルジュ』という仕組みを提供しています。これは好みを登録するだけで、こちらで代替して1番マッチする生産者を探すサービスです。およそ850の生産者のなかから、簡単に好きな農家が見つかる仕組みを取り入れているのは特徴的かなと思います」と胸を張ります。
現在、農家が抱えている課題について、「1番にやはり“後継者不足”があって、そこから農地の問題にもつながっている。元をたどると“儲からない”に尽きるのかなと思っていて。儲かれば、やる人は増えるはず」と話します。そして、“売る”ことに関して農業が抱えている大きな課題として秋元さんが挙げたのは、「生産者に対して選択肢がないこと」。
「安定的にスーパーに食材が並ぶのは、JA(農業協同組合)があるから。農家は、(商品を)JAに持って行けば全量買い取ってくれるんです。一方、すごくこだわってつくっている人からすると、形と色が一緒であれば、同じ価格での買い取りになるので、“こだわり”が価格に反映されない」とメリット・デメリットを説明。
「消費者側のニーズが多様化しているなかで、農家でもいろいろなものをつくっているので、販路をいろいろと選べてもいいよねって。それをいま、私たちがやっているところ」と話します。
◆起業したきっかけ
農家の家庭で育った秋元さんは、両親からは「農業は継ぐな」「絶対に潰れない会社に入るか、公務員になりなさい」と言われていたそうで、学生時代は「安定志向だった」と振り返ります。
進路を考える時期に差し掛かったころ、「たまたま友達から『タダでお寿司が食べられるよ』って誘われて説明会に行ったんです(笑)。それがDeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)だった。そこで、創業者の南場智子さんが講演をされていて、当時は球団(現・横浜DeNAベイスターズ)を買収したくらいのタイミングで、これから会社として“もっと大きくなっていくぞ”という勢いに圧倒されて、一気に気持ちが傾いていった」。
そして、新卒でDeNAに入社した秋元さんは、起業するという気持ちは一切なく、ゲームのマーケティングに明け暮れていたそう。しかし、入社から3年くらい経ったころ、「自分がやりたいことってなんだろう?」と考えたとき、農家を廃業して、荒れ果ててしまった実家の畑を見て、「昔は、すごく色鮮やかな畑だったので、“色を取り戻したい!”って、妄想というか想像が膨らんでいったのが最初のきっかけだった」と話します。
それを機に“農業に関わる事業をやってみたい”という思いが芽生えた秋元さんは、週の5日間はDeNAの仕事をやりながら、残りの2日を農業の事業にまつわることに充てていたそうで、「当時、興味があったのは農業だったので、やっぱりこの割合を増やさなきゃと思った」と振り返ります。
そして、会社を辞めて転職しようと考えていたときに、「電撃的な出会いがあった」と言います。「そのとき、たまたま相談していた私よりも年下の起業家の方に、『そんなにやりたいんだったら起業したら?』って言われて。その人と話していた1時間で起業することを決めたんです(笑)。すごい勢いで考えが変わった」と経緯について触れました。
◆「食べチョク」を通して痛感したギャップ
ビビッドガーデンを立ち上げてからこれまでを振り返り、秋元さんは「見える世界がどんどん変わっていくのがすごく楽しい。起業当初に思っていたよりも本当に広い世界が見えていて、経営者としてある意味ちょっと俯瞰した立場でいろいろと考えているからこそ、見えてきている感じはありますね」と実感を語ります。
「食べチョク」を通して、素晴らしいものをつくる農家と消費者をつなげれば“絶対に売れる!”との思いで、サービスをスタートしたものの、「やってみたらすごくギャップがあることを痛感した。農家の方たちは、すごくいいものをつくって、こだわってやっているんですけど、(商品の良さを)伝える手間を面倒くさがったり、職人気質だったりするんです。農家の方たちが“これで伝わるだろう”と思うクオリティが、消費者が日々接しているもののなかで、届いたときに本当にその真価が伝わるかどうか(が大切)」。
提供する品質はすごく高い一方で、「若干、サービスクオリティに近いというか。いま、消費者の方にはいろいろなサービスがあるので、“いいもの”かつ“届け方”(も問われる)。それこそD2C(直接(Direct)消費者(Consumer)に販売する仕組み)などでは、品質が高いうえに、ちゃんと(商品を)魅力的に伝えるところがどんどん出てきている。
ただ品質が高いだけでなく、それをどう伝えるか、どう理解してもらえるかというところは、農家ではできなかったりする部分なので、魅力がちゃんと伝わらなかったり……。消費者側とのギャップが大きいなというのを『食べチョク』をやってみて顕著に見えてきた」と言います。
さらには「野菜が買えるサービスがたくさんあるなかで、産直(産地直送)で買う人たちに、どう産直の意味を知ってもらうかもすごく大事」。例えば、届ける商品にメッセージを入れておく、というひと手間を加えるなど、「個人同士だからこそできるやり取りやおもてなしなど、ちょっとしたことでいいんですけど“人がいる感”だと思う。そういうナレッジを農家に展開して、“いいな”と思ったことをやってもらえたらいいなと思う」と話します。
また秋元さんは、システム上で解決できることにも注力しているそうで「農家側が情報を更新しなくても、お客さん側はなにが届くかわかるなど、そういう仕組みを取り入れています。お客さんとのギャップを埋めるために、農家にフィードバックするというアナログ的なこともやっていますし、システムで解決できる部分も多くある。野菜が届いてファンになれば、その人から“直接買う”という体験につながるのかなと思っています」と熱く語ってくれました。
イラスト:五月病マリオ
次回4月11日(土)の放送も、引き続き秋元さんをゲストに迎えてお届けします。どうぞお楽しみに!
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<番組概要>
番組名:マスメディアン 妄想の泉
放送日時:毎週土曜 24:30~25:00
パーソナリティ:ハヤカワ五味
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/mousou/
番組Twitter:
@mousou_tfm