2022年9月18日

幸田文
『木』
(新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1904年(明治37年)9月1日、東京・墨田区に生まれた幸田文さん。作家として活動をスタートさせたのは40歳をすぎてから。父・幸田露伴が亡くなってからのことでした。ものを書く苦しみを、父親をとおして知っていたこともあり、それまで文筆の道に対して嫌悪の気持ちまで持っていたそうです。ところがそれが一変したのは、幸田露伴の死。父親が亡くなったあと、人から物を書くことを次々に求められ、結局この道に進むことになったということです。今回の随筆集「木」は、幸田文さんが60代後半から70代にかけて発表した作品を1冊にまとめたもの。平成2年、86歳で亡くなったあとに出版されました。

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