2022年3月6日

川上弘美
『神様2011』
(講談社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

川上弘美さんのデビュー作「神様」。1993年に書かれた小説で、翌年「パスカル短篇文学新人賞」を受賞しています。主人公の「わたし」が、自分の部屋の三つ隣に越してきた「くま」と一緒に散歩に出て、川原で1日過ごすというお話。それはまさに「川上弘美ワールド」。「わたしとくま」の関係が、小説「センセイの鞄」の「ツキコさんとセンセイ」に重なります。それから18年後、川上弘美さんはこの小説「神様」を書き直し「神様2011」を発表しました。きっかけは東日本大震災。「当たり前だと思っていた日常が、何かのことで大きく変化してしまう可能性をもつものだ」という想いが、この作品には込められています。

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