2021年12月5日 | |||
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「いつもの癖出すだな」と娘を叱り、「私」に対しても「病人を係って何が面白いだか」と言う老婆。その娘の病気とはいったいどんなものなのか?わからないまま朝を迎え、老婆たちが船を下りようとした時に気づいたのは、自分の荷物の中からピンの箱がなくなっていることでした。リアルな船の描写と矛盾する心を抱えた人間の様子。まさに短編小説「夜航船」は、あるがままの真実の姿を追求する自然主義文学の名作です。明治39年、35歳の時に、この作品を発表した徳田秋声。その33年後の昭和14年には、長編小説「仮装人物」で第一回「菊池寛賞」を受賞しています。最近では読まれることも少なくなっていますが、今後も読み継いでいきたい作家のひとりです。 |