2021年7月4日

サン=テグジュペリ
『星の王子さま』
(文春文庫)

シルヴァスタインの絵本「ぼくを探しに」の翻訳でも知られる倉橋由美子さん。2005年6月に69歳で亡くなっていますが、その直前まで取り組んでいたのが「星の王子さま」の翻訳。出版されたのは亡くなってひと月後のことでした。遺作となった「星の王子さま」をどんな想いで翻訳されたのか。最もこだわったのは「なぜ星の王子さまは最後に消えたのか」ということだったそうです。不時着したサハラ砂漠で、私が出会った王子さまは、大人の世界とは対立する自分の中の「反大人」。しかし私が現実の大人の世界に戻ることになった時、王子さまとはお別れしなくてはなりません。だからこそもう一人の自分と「さよなら」した私には、透明な悲しみが残ると倉橋由美子さんは分析されています。

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