心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
毎年4月16日の命日近くに、川端康成の代表作を味わっていますが、今年選んだのは小説「千羽鶴」。断続的に雑誌に掲載された連作を、ひとつにまとめて1952年(昭和27年)に刊行した作品です。物語の舞台は鎌倉。主人公の菊治は、栗本ちか子が主催する円覚寺での茶会に行こうか行くまいか迷っていました。実は茶の師匠である栗本ちか子と菊治には因縁があるのです。子供の頃、父に連れられて訪ねた先は、ちか子の家。その時、彼女は茶の間で胸をはだけて、あざの毛を小さい鋏で切っていました。自分の父親とちか子がただならぬ関係であることを、菊治は子供ながらに感じたのです。
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