2020年11月08日

坂口安吾
『直江山城守』
(宝島社文庫)

「直江山城守」が、短編時代小説オールタイムランキングの第5位に選ばれた理由のひとつが「坂口安吾の、半端ない兼続愛を感じる」とのこと。確かに読むと安吾による独自の解釈のもと、いかに直江兼続が魅力的な人物だったのかが伝わってきます。自分の利益のためには手段を選ばず、勢力を拡大しようとする戦国時代にあって、愛を重んじ義を貫き通した武将。さらに詩人でもありました。「直江山城守」が発表されたのは、戦後7年目のこと。あの戦争で日本の軍人たちが見失っていた大事なものを、直江兼続は持っていたと、坂口安吾は感じていたのかもしれません。「私は山城が一番好きである」と言い切る安吾の半端ない愛がまぶしいほどストレートに伝わってくる作品です。

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