2020年09月13日

山田詠美
『ぼくは勉強ができない』
(新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「10代ならではの悩みがしっかり分かる1冊」とリスナーの方からリクエストをいただいた山田詠美さんの連作短編集「ぼくは勉強ができない」。主人公の「ぼく」は、時田秀美という高校生です。題名にもあるとおり「勉強はできない」けれど、クラスの「人気者」。人生には勉強よりも素敵で大切なことがある、ということを知っている17歳です。そして彼のまわりにいる大人たちも個性的な人物ばかり。社会常識にとらわれない母と祖父。バーで働く年上の恋人。そして担任の桜井先生。彼らに影響を受けながら成長していく時田秀美。その姿をとおして読者も一緒に「本当に人間らしい生き方とはなんだろう」「人を愛するとはどういうことなのか」を考えることができるのです。

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