2020年08月23日

魚住陽子『雨の中で最初に濡れる』
(河出書房新社「小川洋子の陶酔短篇箱」)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

アンソロジー「小川洋子の陶酔短篇箱」から、夏の終わりに読みたい短編小説として選んだ魚住陽子さんの「雨の中で最初に濡れる」。1992年に発表されたこの作品は、タイトルも不思議で、描かれている世界も不思議です。夏の終わり「私」の前に突然現れた見知らぬ女。その人物は、雨の気配とともに度々やってきて「私」に何かを売りつけようとします。美肌のためのスクアラン、お腹の中をきれいにするお茶、そしてレイエン。その女はいったい何者なのか?その目的は何なのか?最後まで読んでも本当に意味するところはわかりません。でも読んだあと心に何かが残っている。それは通り過ぎた夏の終わりの雨のように、心の中に水たまりを残していきます。

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