心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
「メロディアス・ライブラリー」では何度も取り上げている内田百閧フ作品。紀行文「阿房列車」にはじまり、随筆「古里を思う」、小説「冥途」「サラサーテの盤」「件」など代表作を味わいました。幻想的であったり、どこかユーモラスだったり、どれも内田百閧ノしか書けない世界ですが、今回の「柳検校の小閑」はなんと恋愛小説。しかも純愛、悲恋の物語です。主人公は、お箏の先生。目は不自由であっても視力以外の感覚はするどく、そのまぶたの奥で心惹かれる相手を見つめている。その繊細な心模様が微かに触れる手の感触のように伝わってきます。しかしある出来事によってその想いは実らない。深い余韻が残る内田百閧ネらではの恋愛小説です。
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