2020年03月08日 | |||
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小説「想像ラジオ」には、もうひとり作家Sという人物が登場します。彼は「聴こえない」ということに苦しみ、診てもらうと「航空性中耳炎」という診断。簡単な手術を受け少しは改善しますが、でも彼が本当に聴きたいと願うものは耳に届かないままです。作家Sは「想像ラジオ」が聴けないことに苦しみ、亡くなった人との回路を求めようとする人。つまりこの小説は、生きている人に想いを伝えたいと願う死者と、亡くなった人からのメッセージをキャッチしたいと願う生者の物語です。作家Sのこんな言葉が心に残ります。「亡くなった人の声に時間をかけて耳を傾けて悲しんで悼んで、同時に少しずつ前に歩くんじゃないのか。死者と共に」。 |