2020年01月19日

スチュワート・ダイベック
『冬のショパン』
(白水Uブックス『シカゴ育ち』)

マーシーは音楽の奨学金をもらって大学に進学したキュービアック家の希望の星。しかし妊娠したことで家に戻ってきて、毎晩のようにピアノを弾いています。アパートの上の階から聞こえてくる音色。それを聞きながら台所でスペリングの勉強をしている僕。そしてバケツに入れたお湯に足を浸すジャ=ジャ。音楽がふたつの家族を細い糸でつなぎ、通気口を通って流れるショパンの曲が、それぞれ抱えている苦悩を伝えていきます。「あなたが訳した本のなかでこれがいちばん好きだ」と柴田元幸さんに伝える読者も多いそうです。「冬のショパン」も入っているダイベックの短編集「シカゴ育ち」。何かが胸に染みる1冊です。

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