心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
11月10日は高倉健さんの命日にちなんで、主演映画「居酒屋兆治」の原作を味わってみました。1979年10月から1年間、文芸雑誌「波」に「兆治」という題名で連載され、その後1冊にまとめて「居酒屋兆治」として出版された山口瞳の小説。物語の主人公は、もつ焼き屋を営む藤野伝吉。まわりの人たちは彼の店の名である「兆治」として親しんでいる人物です。彼には支えてくれる奥さんがいますが、胸の片隅には他の女性の影が。それは兆治が21歳の時に知り合った「さよ」。二人は強く惹かれあいますが「さよ」の幸せを願い兆治は身を引くことにするのです。社会の片隅でひっそりと生きる人たちの切ない人生が描かれている小説。兆治と高倉健さんの存在が重なります。
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