2019年10月27日

ルシア・ベルリン
『掃除婦のための手引き書』
(講談社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

本の帯には翻訳を手掛けられた岸本佐知子さんのこんな言葉が記されています。「このむきだしの言葉、魂から直接つかみとってきたような言葉を、とにかく読んで、揺さぶられてください」。ルシア・ベルリンの作品集「掃除婦のための手引き書」。小川洋子さんも、「こういう作品に出会えるなんて、本を読んでいて幸せなこと」と感じた大推薦の1冊です。表題作の主人公は、掃除婦として様々な家で働いています。その雇い主とのやりとりや掃除婦として働く家庭の状況、仕事仲間との会話が、素っ気ないとも言える文章で綴られています。しかし読んでいくと胸の中に切ないかけらがいくつも残っていく。人生の奥深いところにある悲しみをすくいとっているような小説です。

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