大正6年に日記を付け始め、亡くなる前日の昭和34年4月29日まで42年間続いた「断腸亭日乗」。これを読むと永井荷風がどんなふうに暮らし、どんなことを想い、さらに荷風が生きた大正から昭和がどんな時代だったのかも感じることができます。味わい深い漢語まじりの文語体で書かれ、またその残し方も特別。まず手帖に鉛筆でその日のメモを書き、次に万年筆で大型ノートにメモからおこした文章を書き、推敲を重ねて最後に筆で和紙に書く。はじめから文学として残すことを前提に書いたのでははいでしょうか?戦争中、東京大空襲で荷風が住んでいた場所「偏奇館」が焼けた時にも持って逃げるほど、いかに永井荷風が「断腸亭日乗」を大切にしていたのかがわかります。
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