2019年06月02日

カフカ
『断食芸人』
(白水Uブックス)

カフカというとまず浮かぶのが「変身」。男がある朝、目覚めると1匹の大きな虫に変わっていたという不思議な物語で、29歳の時の小説です。そしてその10年後に書いたのが「断食芸人」。その頃のカフカは結核を患い、勤めをやめる手続きをしていました。その後、結核菌が喉に広がりほとんど何も食べられなくなっていたそうです。出版社から校正刷りが送られてきた時、食べられなくなったカフカが、食べない断食芸人の物語を読み返すという状況。カフカの人生はまさに断食芸人と重なり、だからこそ小説の言葉が胸に残ります。「自分に合った食べ物を見つけることができなかった。もし見つけていれば・・」。

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