2019年04月14日

川端康成
『山の音』
(新潮文庫)

「メロディアス・ライブラリー」で今までに取り上げた川端康成の小説は、「雪国」「伊豆の踊子」「古都」「片腕」「眠れる美女」「みずうみ」。読めば読むほど川端文学のすごさを感じてしまいます。日本の美を表現した作品の奥に流れる人間の本質。孤独や絶望、老いへの恐怖、若さや生への執着。さらに今回取り上げた「山の音」には戦後まもない日本が抱えていた苦悩も描かれています。平凡な家族の暮らしの中に見えてくる狂気。それは戦争を体験した人間が抱えている傷なのでしょうか?何気ない文章の中にも、素通りできないものを感じる川端文学。その隅々を味わうために、何度でも読み返したくなる小説ばかりです。

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