2019年04月07日

檀一雄
『花筐』
(光文社文庫)

小説「花筐」が世に出た翌年の昭和12年、日中戦争がはじまりました。当時25歳だった檀一雄にも召集令状が届きます。それも「花筐」の出版記念会の当日でした。戦争の時代に言いたくても言えない想いをどう伝えていくのか。多くの作家が文学の中に込めて表現していきます。「花筐」の中に死の予感が満ちているのも檀一雄の想いが反映しているからかもしれません。「今なら僕、戦争にだって行きますよ」という榊山が母に宛てた手紙。この言葉の中に、戦争の時代を懸命に生きようとする若者たちの苦しみが表現されています。何度も何度も読み返すと、行間の中に込められた想いがより伝わってくる作品。大林宣彦さん曰く「想像力を目一杯駆使して味わう一編」です。

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