心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
日本人にとって「桜」は特別な存在です。語り継がれている伝承文学の中でも、作家によって綴られた物語でも、「桜」にはどこか死の影があります。日本人の死生観を表す「桜」。海外からやってきて日本人になった小泉八雲にとっても、きっと興味深い植物だったのではないでしょうか?明治37年に出版された小泉八雲の怪奇文学作品集「怪談」の中にも「乳母ざくら」と「十六ざくら」という物語が収められています。どちらも江戸時代の伊予の国(愛媛県の松山あたり)が舞台。そしてどちらの物語にも、人の強い想いによって咲き続ける桜が出てきます。「桜」が生と死を結びつけるものでもあることを、あらためて感じる二つの物語です。
...続きを読む |