2018年11月25日

安部公房
『箱男』
(新潮文庫)

「箱男」と自ら名乗る「ぼく」。「箱男」になるための「箱の製法」についても丁寧に書き、「箱男」であっても不便なく用を足せる方法まで綴っています。次に登場するのは「A」という人物。彼のアパートの窓のすぐ下に、一人の「箱男」が住みつき、それに苛立った「A」は空気銃で追い払う。しかし不思議なことに「A」もまた冷蔵庫が入っていたダンボールで「箱男」になってしまうのです。理屈を取っ払い、ただただ小説「箱男」の世界に迷い込んでみると、どんな風景が見えてくるのでしょうか?「箱の穴から見える世界を見ていたのに、いつの間にか箱の内側を見ていたことに気づく。それは箱男の頭の中」と小川洋子さん。つまりこの本は、安部公房の頭の中を覗く読書体験なのかもしれません。

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