2018年10月14日

武田百合子
『ことばの食卓』
(ちくま文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

小川洋子さんが、いつでも手に取れる場所に置いて、繰り返し読んでいる武田百合子さんの作品。今までに番組では「富士日記」や「犬が星見たーロシア旅行」を味わいました。今回の「ことばの食卓」もやはり武田百合子さんならではの世界。ご主人である武田泰淳さんとの思い出を綴った「枇杷」、子供の頃の記憶を描く「牛乳」や「キャラメル」など食べ物をテーマにしたエッセイ集です。どこか寂しく、怖く、切なく、はかない。簡潔な文章なのに、言葉のひとつひとつに魅力がある。日常のなんでもない時間の中から様々な世界を見つめ、そこに本質を捉えている。「なぜこんなに奥深い作品が書けるのか」と小川さんをも唸らせる武田百合子さんの作品です。

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