2018年8月12日

トーマス・マン
『トニオ・クレーゲル』
(新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

8月12日は、ドイツのノーベル賞作家トーマス・マンの命日。今から63年前、80歳で亡くなっています。今回は、初期の代表作の中から小説「トニオ・クレーゲル」を選んでみました。題名にもなっている主人公の少年トニオは詩を書き、ヴァイオリンを弾く繊細な14歳。そして好意を寄せるハンス・ハンゼンという同級生がいます。最初の場面は二人の下校風景。しかしトニオの想いはハンスには届かず、自分と彼の間には大きな違いがあることを痛感します。さらに16歳になったトニオは金髪の少女インゲボルク・ホルムに惹かれます。しかし結果はハンスの時と同じ。彼女が自分とは違う世界に住む人間だと感じるのです。

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