心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
苦沙弥先生の家に住む猫の視点で物語が進んでいく小説「吾輩は猫である」。今から113年前の明治38年、夏目漱石が39歳の時に発表し、およそ1年間連載が続いた処女小説です。先週はその前半を取り上げたので、その続き第8章から読んでみました。ある日の午後、猫は縁側で昼寝をして、虎になった夢を見ていました。すると家中に響く大きな声。猫が夢から覚めると、中学生が庭に野球ボールを打ち込み苦沙弥先生が激昂しているのです。大きなストーリーはなく、日々の出来事ややりとりが綴られているこの作品。その魅力はやはり登場人物。先生の教え子の水島寒月や友人の美学者・迷亭をはじめ、先生の妻や子供達も物語の魅力を作っています。
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