2017年3月19日

江戸川乱歩
『人間椅子』
 (角川ホラー文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「人間椅子」という題名だけでも江戸川乱歩のすごさを感じてしまいますが、この小説を大正14年に発表したことでも驚きです。登場するのは、美しく才能豊かな佳子という名前の作家。彼女は外務省書記官の妻で、夫が仕事に出た後、住んでいる洋館の書斎にこもって仕事をしています。彼女がまずおこなうのはファンから届いた手紙に目をとおすこと。そしてある手紙を読み始めます。それは原稿用紙で綴じられ、「奥様」という呼びかけの言葉で始まっていました。書いたのは椅子職人。彼は椅子に仕掛けを作って、自分が中に入ったと告白。この手紙を読んだ佳子は恐ろしい予感のため、真っ青になっていくのです。

...続きを読む