2017年2月19日

谷崎潤一郎
『猫と庄造と二人のおんな』
 (新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

2月22日は「ニャンニャンニャン」で「猫の日」です。その日を前に猫にちなんだ作品、谷崎潤一郎の短編小説「猫と庄造と二人のおんな」を選んでみました。登場人物は庄造という男と彼に関わる二人の女「前妻と今の妻」。そして庄造が溺愛するリリーという名前の猫です。書き出しは、なんと庄造の前妻・品子が、今の妻・福子に宛てた手紙から始まります。「私あなたの家庭から唯ひとつだけ頂きたいものがあるのです。勿論貴方のあの人を返せと云うのではありません。実はもっともっと下らないもの、リリーちゃんがほしいのです」。こんな手紙を受け取った福子は冷静ではいられません。庄造に対して、品子にリリーを譲るように迫ります。

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