2016年9月4日
吉行淳之介
『童謡』
 (中公文庫)

しかし入院した少年は「蒲団の国」に行くどころではありませんでした。高熱が続き、血や肉は燃え尽き、白い乾いた地面の上に投げ捨てられた死体のようになってしまいます。自分が自分でないように感じる少年。この小説を教科書で読んだ中学生はどんなことを感じるのでしょうか?病気に限らず思春期は体が最も変化していく時。それについて行けず自意識過剰になってしまう自分と物語の主人公を重ね合わせることができるかもしれません。ちなみに作者である吉行淳之介さんは16歳の時に腸チフスにかかり、半年ほど入院していたそうです。その時の体験がこの小説のリアリティを生み出しているのではないでしょうか?

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